『ガラスの麒麟』は、加納朋子が書いたミステリーで、通り魔に刺殺された17歳の女子高生・安藤麻衣子が残したものを、養護教諭の神野が6編にわたってたどっていく連作短編集です。表題作「ガラスの麒麟」が1995年に第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)を受賞し、その2年後の1997年8月に講談社から短編集としてまとまりました。この記事では、あらすじ・収録6編・読みどころまで紹介します。
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- 表題作が第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)受賞
- 6編でひとつの死を照らし直す連作短編集
- 講談社文庫の新装版が2021年9月に出ている(416ページ)
ガラスの麒麟とは|1つの死を6編で照らし直す連作短編集
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 著者 | 加納朋子 |
| 初刊 | 講談社・1997年8月(ISBN 4-06-208757-X) |
| 文庫 | 講談社文庫・2000年6月/新装版 2021年9月15日・416ページ・定価880円(ISBN 978-4-06-524972-7) |
| 受賞 | 表題作「ガラスの麒麟」で第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門・1995年) |
| 映像化 | 2026年9月時点で確認できていません |
出典:講談社『ガラスの麒麟 新装版』製品詳細、新潮社 加納朋子 著者プロフィール、国立国会図書館サーチ(2026年9月12日時点)
受賞と刊行の年がずれている点に注意してください。賞を受けたのは1995年発表の短編「ガラスの麒麟」1編で、それを含む連作短編集として本になったのが1997年です。「受賞作を読む」つもりで手に取ると、表題作はそのうちの1編だと分かります。
ガラスの麒麟のあらすじ|17歳の女子高生が刺殺される

通り魔に刺された少女がいる
17歳の女子高生・安藤麻衣子が、通り魔に刺殺されます。
とびぬけて美しく、すべてに恵まれていたように見える少女でした。
残された『ガラスの麒麟』という応募作
同級生・直子の父である野間は、童話雑誌の挿絵を手掛けるイラストレーターです。
彼がこれから絵をつける予定だった雑誌への応募作『ガラスの麒麟』の書き手が、殺された麻衣子でした。
事件の日から直子は、麻衣子が乗り移ったようなことを口走り、学校へ行かなくなります。
養護教諭・神野が語り手をつなぐ
心配した野間は、葬儀で出会った養護教諭の神野に娘のことを打ち明けます。
神野は直子を知り、麻衣子にも詳しい女性でした。
以降の各編は語り手を替えながら進み、神野が全編に顔を出すことで1冊がつながります。精一杯首を伸ばして背伸びする麒麟の姿が、麻衣子の何を指していたのかが最後に見えてきます。
ガラスの麒麟の3つの読みどころ

1. 収録6編が互いの答えになっている
本書には次の6編が収められています。
| 収録順 | 表題 |
|---|---|
| 1 | ガラスの麒麟 |
| 2 | 三月の兎 |
| 3 | ダックスフントの憂鬱 |
| 4 | 鏡の国のペンギン |
| 5 | 暗闇の鴉 |
| 6 | お終いのネメゲトサウルス |
1編ごとに独立した謎が解ける一方で、麻衣子の死の像は少しずつしか更新されません。前の編で確定したと思った事実が、後の編の別の語り手によって裏返ります。
2. 事件を追うのが探偵ではなく養護教諭であること
保健室は、教室にいられない生徒が来る場所です。神野は捜査権を持たず、生徒の話を聞くしかできません。だからこそ聞き出せる種類の言葉があり、それが本書の手がかりになります。
3. 「日常の謎」の書き手が死を扱ったときの温度
加納朋子はデビュー作『ななつのこ』で第3回鮎川哲也賞を受けた、いわゆる「日常の謎」の書き手です。本書は人が刺し殺される話でありながら、残虐な描写で押していきません。読後に残るのは犯人の造形ではなく、麻衣子という人物の輪郭です。
ガラスの麒麟の版と入手方法

| 版 | 出版社 | 刊行 |
|---|---|---|
| 単行本 | 講談社 | 1997年8月 |
| 文庫 | 講談社文庫 | 2000年6月 |
| 文庫(新装版) | 講談社文庫 | 2021年9月15日・416ページ・880円 |
| 大活字本 | 埼玉福祉会 | 2006年11月 |
新刊書店で手に入りやすいのは2021年の講談社文庫 新装版です。
ガラスの麒麟の読了時間と難易度
文庫新装版で416ページ、6編の連作短編集なので1編あたりの負荷は軽めです。一般的な読書速度で5〜7時間が目安になります。
短編単位で切って読めますが、語り手が編ごとに替わるため、間隔を空けすぎると誰の視点だったか分からなくなります。数日でまとめて読み切るほうが、伏線の回収を体感しやすい作りです。
ガラスの麒麟に関するよくある質問
ガラスの麒麟はどんな賞を受賞しましたか
表題作「ガラスの麒麟」が1995年に第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)を受賞しています。単行本の刊行はその2年後の1997年8月です。
長編ですか、短編集ですか
6編からなる連作短編集です。各編で謎が解けますが、安藤麻衣子の死という1本の軸が全編を貫きます。
『ななつのこ』を先に読む必要はありますか
必要ありません。物語のつながりはなく、本書だけで完結します。ただし作風の入口としては『ななつのこ』のほうが穏やかです。
映像化されていますか
2026年9月時点で、ドラマ化・映画化は確認できていません。
加納朋子の他の作品はどれを読むべきですか
デビュー作の『ななつのこ』がよく挙げられます。作品一覧は加納朋子の全作品ガイドにまとめています。
まとめ|死んだ少女の像が、6編かけて書き直される
- 『ガラスの麒麟』は、通り魔に刺殺された17歳の像を、養護教諭の神野が6編かけてたどり直す連作短編集
- 表題作が第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)を受賞(1995年・単行本は1997年)
- 1編ごとに謎は解けるが、麻衣子の人物像は後の編で何度も裏返る
- 現行版は2021年の講談社文庫 新装版(416ページ)
読み終えると、最初の1編で受け取った印象がほとんど残っていないことに気づく作品です。
長編や積んだままの本ほど、聴くと最後までたどり着けます。
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