『家庭用安心坑夫』は、小砂川チトが書いた純文学で、日本橋三越の柱に幼い頃のシールを見つけた専業主婦・小波の生活圏に、「あなたの父親だ」と言い聞かされてきた廃坑テーマパークのマネキン人形が現れ始める作品です。第65回群像新人文学賞を受賞したデビュー作で、そのまま第167回芥川賞の候補になりました。この記事では、あらすじ・読みどころ・どの版を買うのが得かまで紹介します。
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- 第65回群像新人文学賞受賞のデビュー作・第167回芥川賞候補
- 2026年6月に『猿の戴冠式』との合本文庫が出た
- 合本文庫935円。単行本2冊(3,300円)より安く2作読める
家庭用安心坑夫とは|芥川賞作家のデビュー作
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 著者 | 小砂川チト(1990年生まれ・岩手県盛岡市出身) |
| 初刊 | 講談社・2022年7月11日・128ページ・定価1,540円(ISBN 978-4-06-528857-3) |
| 文庫 | 講談社文庫『家庭用安心坑夫/猿の戴冠式』・2026年6月12日・288ページ・定価935円(ISBN 978-4-06-543765-0) |
| 初出 | 『群像』2022年6月号 |
| 受賞 | 第65回群像新人文学賞(2022年)/第167回芥川賞候補 |
出典:講談社『家庭用安心坑夫』製品詳細、同『家庭用安心坑夫/猿の戴冠式』、国立国会図書館サーチ、Wikipedia『小砂川チト』(2026年9月13日時点)
著者はこのデビュー作からずっと芥川賞の候補に挙がり続け、3作目の『ゾンビ回収婦』で第175回を受賞しました。作風の原点を知るなら本作が入口になります。
家庭用安心坑夫のあらすじ|貼ったはずのシールが、三越の柱にある

平穏に見える家庭の、漠然とした不安
主人公の小波は、夫との一見平穏な家庭で暮らす専業主婦です。
ただし、漠然とした不安を抱えています。
日本橋三越の柱で見つけたもの
ある日、小波は日本橋三越の柱に、幼いころ実家に貼ったはずのシールがあるのを見つけます。
物語はここから始まります。
父だと言い聞かされた、坑夫のマネキン
小波は母から、いまも実在する廃坑テーマパークに置かれた坑夫姿のマネキン人形が、あなたの父親だと言い聞かされて育ちました。
その父・ツトムが、やがて東京で結婚した彼女の日常と生活圏のいたるところに姿を現すようになります。
現実と幻想が互いに侵蝕していく
現実・日常と幻想・狂気が互いに浸蝕し合いながら、物語は人間の根源的な恐怖へ迫っていきます。
想像力と自己対話によって状況を切り抜けようとする小波は、不可思議で滑稽な言動と行動に及びます。
家庭用安心坑夫の3つの読みどころ

1. 恐怖の正体が説明されないこと
シールがなぜそこにあるのか、ツトムがなぜ現れるのか——作中で合理的な説明は与えられません。読者は小波と同じ位置で、現実が揺らいでいく感覚だけを受け取ります。
2. 滑稽さが小説の強度になっている
主人公の言動は不可思議で、しばしば滑稽です。それが恐怖を薄めるのではなく、かえって小説としての強度になっています。ある種のユーモアが同居している点が、デビュー作でありながら評価された理由です。
3. 「坑夫姿のマネキンが父」という一行の強さ
母が言い聞かせた設定は、説明されるほど不気味になっていきます。家庭という最も安全とされる場所に置かれた嘘が、そのまま題名の「家庭用」と「安心」に効いてきます。
家庭用安心坑夫の版と入手方法|合本文庫のほうが安い

| 版 | 出版社 | 刊行 | 収録 | 定価 |
|---|---|---|---|---|
| 単行本 | 講談社 | 2022年7月11日・128ページ | 家庭用安心坑夫 | 1,540円 |
| 単行本 | 講談社 | 2024年1月19日・144ページ | 猿の戴冠式 | 1,760円 |
| 文庫(合本) | 講談社文庫 | 2026年6月12日・288ページ | 上記2作を同時収録 | 935円 |
2026年6月に出た合本の講談社文庫が、いまいちばん合理的な買い方です。芥川賞候補になった2作がまとめて入って935円で、単行本2冊(合計3,300円)より安く済みます。町田康が「正気小説と狂気小説の間に設置された鉄板を外して、二つを混ぜた珍しい作品」と評しているのも、この文庫版の紹介文です。
家庭用安心坑夫の読了時間と難易度
単行本で128ページと短く、一般的な読書速度で2時間前後が目安です。
説明を求めながら読むと止まります。シールもツトムも理由は示されないので、「なぜ」を保留したまま小波の感覚を追うほうが進みます。文章自体は平易で、純文学の予備知識は不要です。ただし現実の輪郭が崩れていく感触が続くため、そこが苦手な場合は短さのわりに重く感じます。
家庭用安心坑夫に関するよくある質問
家庭用安心坑夫はどんな賞を受賞しましたか
第65回群像新人文学賞を受賞したデビュー作です。第167回芥川賞の候補にもなりましたが、受賞はしていません。著者の芥川賞受賞は3作目の『ゾンビ回収婦』(第175回)です。
単行本と文庫、どちらを買うべきですか
2026年6月刊の講談社文庫は『猿の戴冠式』との合本で935円です。2作読むなら文庫のほうが安く、単行本2冊で3,300円かかります。
廃坑テーマパークは実在しますか
講談社の製品紹介では「いまも実在する廃坑テーマパーク」と記されています。作中の設定として登場します。
ホラー小説ですか
分類は純文学です。人間の根源的恐怖に迫る作品ですが、幻想と滑稽さが同居しており、恐怖描写で押すタイプではありません。
小砂川チトの他の作品はどれを読むべきですか
第175回芥川賞受賞作『ゾンビ回収婦』と、第170回芥川賞候補『猿の戴冠式』です。作品一覧は小砂川チトのおすすめ小説3選にまとめています。
電子版はセールとポイント還元で実質の支払いが下がることがあります。紙と電子で価格が違うので、Amazonで確認してください。
まとめ|家庭に置かれた嘘が、現実の輪郭を溶かしていく
- 『家庭用安心坑夫』は、三越の柱のシールと、父だと教えられた坑夫のマネキンが、専業主婦の日常に侵蝕してくる作品
- 第65回群像新人文学賞受賞のデビュー作・第167回芥川賞候補
- 恐怖の理由は説明されない。滑稽さが同居しているのが特徴
- 2026年6月の合本文庫(935円)で『猿の戴冠式』とまとめて読める
安心という言葉が、これほど不穏に響く題名もそうありません。
長編や積んだままの本ほど、聴くと最後までたどり着けます。
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