『猿の戴冠式』は、小砂川チトが書いた純文学で、ある事件以降引きこもっていたしふみが、テレビ画面のなかに「おねえちゃん」を見つけ、言葉を機械学習させられた過去をもつボノボ「シネノ」と魂をシンクロさせていく作品です。第170回芥川賞・第37回三島由紀夫賞・第46回野間文芸新人賞の候補になりました。この記事では、あらすじ・読みどころ・合本文庫での入手方法まで紹介します。
※本ページはアフィリエイトリンクを含みます。
- 第170回芥川賞・三島由紀夫賞・野間文芸新人賞の3賞候補
- 2026年6月に『家庭用安心坑夫』との合本文庫が出た
- 合本文庫935円。単行本2冊(3,300円)より安く2作読める
猿の戴冠式とは|3賞の候補になった2作目
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 著者 | 小砂川チト(1990年生まれ・岩手県盛岡市出身) |
| 初刊 | 講談社・2024年1月19日・144ページ・定価1,760円(ISBN 978-4-06-534695-2) |
| 文庫 | 講談社文庫『家庭用安心坑夫/猿の戴冠式』・2026年6月12日・288ページ・定価935円(ISBN 978-4-06-543765-0) |
| 初出 | 『群像』2023年12月号 |
| 候補 | 第170回芥川賞/第37回三島由紀夫賞/第46回野間文芸新人賞(いずれも2024年・受賞ではありません) |
出典:講談社『猿の戴冠式』製品詳細、同『家庭用安心坑夫/猿の戴冠式』、国立国会図書館サーチ、Wikipedia『小砂川チト』(2026年9月13日時点)
3つの賞の候補になりましたが、いずれも受賞はしていません。著者が芥川賞を受けたのは次の作品、第175回の『ゾンビ回収婦』です。本作はデビュー作『家庭用安心坑夫』に続く2作目で、2度目の芥川賞候補にあたります。
猿の戴冠式のあらすじ|テレビの中に「おねえちゃん」を見つける

引きこもっていた、しふみ
主人公のしふみは、ある事件以降、引きこもっていました。
画面のなかの「おねえちゃん」
そのしふみが、テレビ画面のなかに「おねえちゃん」を見つけます。
それをきっかけに、動植物園へ行くことになります。
ボノボ「シネノ」との邂逅
そこで出会うのが、言葉を機械学習させられた過去のある類人猿ボノボ「シネノ」です。
しふみはシネノと魂をシンクロさせ、交歓していきます。
剥ぎ取りたいのは、人間の女の皮
作中にはこう書かれます。
「女がいますぐ剥ぎ取りたいと思っているものといえば、それは〈人間の女の皮〉にちがいなかった」。
「女とシネノは同じだった」——ガラスの向こうに立つボノボと、人間の〈ふり〉をする女が重なっていきます。
猿の戴冠式の3つの読みどころ

1. 題名が作中の詩句で回収される
冒頭に置かれるのは、「いい子のかんむりは/ヒトにもらうものでなく/自分で/自分に/さずけるもの」という一節です。戴冠——冠を授ける行為が誰の手によるものかという問いが、そのまま題名になっています。
2. 言葉を教えられた猿という設定の使い方
シネノは言葉を機械学習させられた過去を持ちます。人間の言葉を与えられた存在と、人間の〈ふり〉をして生きる女が、どちらも「本来の自分でない振る舞い」を課されている点で重なります。設定が比喩として最後まで機能します。
3. 交感が救いとして書かれないこと
しふみとシネノの魂のシンクロは、癒やしの物語には着地しません。ガラス越しという物理的な隔たりは最後まで残り、その距離が作品の緊張を保ちます。
猿の戴冠式の版と入手方法|合本文庫が最も安い

| 版 | 出版社 | 刊行 | 収録 | 定価 |
|---|---|---|---|---|
| 単行本 | 講談社 | 2024年1月19日・144ページ | 猿の戴冠式 | 1,760円 |
| 単行本 | 講談社 | 2022年7月11日・128ページ | 家庭用安心坑夫 | 1,540円 |
| 文庫(合本) | 講談社文庫 | 2026年6月12日・288ページ | 上記2作を同時収録 | 935円 |
2026年6月刊の合本文庫がいちばん合理的です。芥川賞候補になった2作がまとめて入って935円で、単行本2冊(合計3,300円)より安く済みます。町田康による「正気小説と狂気小説の間に設置された鉄板を外して、二つを混ぜた珍しい作品」という評は、この文庫版に寄せられたものです。
猿の戴冠式の読了時間と難易度
単行本で144ページ、一般的な読書速度で2〜3時間が目安です。
3作のなかでは最も詩的で、文章の密度が高い作品です。引用した詩句のように改行を多用する箇所があり、筋を追うだけの読み方だと手応えが薄くなります。逆に一文ずつ味わう読み方に向いており、短さのわりに読み終えるまで時間がかかることがあります。
猿の戴冠式に関するよくある質問
猿の戴冠式は芥川賞を受賞しましたか
受賞していません。第170回芥川賞の候補作です。第37回三島由紀夫賞・第46回野間文芸新人賞の候補にもなりましたが、いずれも受賞はしていません。
『家庭用安心坑夫』の続編ですか
続編ではありません。主人公も物語も別で、単独で読めます。
単行本と文庫、どちらを買うべきですか
2026年6月刊の講談社文庫は『家庭用安心坑夫』との合本で935円です。2作読むなら文庫のほうが安く済みます。
ボノボのシネノは実在しますか
作中の登場人物(類人猿)です。言葉を機械学習させられた過去をもつ設定で描かれます。
小砂川チトの他の作品はどれを読むべきですか
第175回芥川賞受賞作の『ゾンビ回収婦』と、デビュー作『家庭用安心坑夫』です。作品一覧は小砂川チトのおすすめ小説3選にまとめています。
まとめ|冠は、誰かにもらうものではない
- 『猿の戴冠式』は、引きこもっていたしふみが、言葉を教えられたボノボ「シネノ」と魂をシンクロさせる作品
- 第170回芥川賞・第37回三島由紀夫賞・第46回野間文芸新人賞の候補(いずれも受賞ではない)
- 人間の〈ふり〉をする女と、言葉を与えられた猿が重なる構造
- 2026年6月の合本文庫(935円)で『家庭用安心坑夫』とまとめて読める
冠を自分で自分に授けるという冒頭の一節が、最後にもう一度効いてきます。
長編や積んだままの本ほど、聴くと最後までたどり着けます。
- 30日間の無料体験。期間内に解約すれば料金はかかりません
- 数十万タイトルが聴き放題(無料体験後は月額1,500円)
- 通勤・家事・散歩の時間が、そのまま読書の時間になります
※対象タイトル・料金・キャンペーン内容は変更される場合があります。作品によっては対象外です。最新の条件は公式ページでご確認ください。




コメント