『戦争と平和』は、レフ・トルストイが1860年代に発表した純文学の長編です。19世紀初頭のナポレオンのロシア侵入を背景に、貴族社会と民衆の姿を描き切った作品として知られています。日本語では新潮文庫が全4巻、岩波文庫が全6巻、光文社古典新訳文庫が全6巻で、同じ小説なのに冊数が違います。しかも光文社版は2021年9月に完結したばかりです。この記事では、あらすじと読みどころ、そして訳の選び方を整理します。
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- 新潮文庫は全4巻。第一巻だけで688ページ
- 岩波文庫は全6巻、光文社古典新訳文庫も全6巻
- 光文社版は2021年9月14日の第6巻で完結
戦争と平和とは|ナポレオン戦争を背景にした一大叙事詩
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 著者 | レフ・トルストイ(1828-1910) |
| 背景 | 19世紀初頭、ナポレオンのロシア侵入 |
| 新潮文庫 | 工藤精一郎訳・全4巻。第一巻は688ページ・1,155円(税込) |
| 岩波文庫 | 藤沼貴訳・全6巻(6冊セットあり) |
| 光文社古典新訳文庫 | 望月哲男訳・全6巻。2021年9月14日の第6巻で完結 |
出典:新潮社『戦争と平和 一』、岩波書店『戦争と平和(六)』、光文社『戦争と平和 6』、openBD(2026年9月22日時点)
新潮社の紹介文は、この作品の性格をこう説明しています。
ナポレオン対ロシア民衆――文豪がとらえた”戦争”のすべて。19世紀初頭、ナポレオンのロシア侵入という歴史的大事件に際して発揮されたロシア人の民族性を、貴族社会と民衆のありさまを余すところなく描きつくすことを通して謳いあげた一大叙事詩。
出典:新潮社『戦争と平和 一』
「戦争小説」ではありません。戦場の章と、舞踏会や領地経営の章が交互に来ます。題名どおり、戦争と平和の両方が書かれます。
戦争と平和のあらすじ|3つの家と、1人の異物

物語は舞踏会から始まる
開幕はペテルブルクの社交界です。
戦争の話題が出ますが、登場人物たちはまだ戦場を知りません。
物語を引っ張るのは、主に3つの貴族の家です。
- ロストフ家——明るく、金銭に無頓着。娘ナターシャがいる
- ボルコンスキー家——厳格な老公爵と、息子アンドレイ
- ベズーホフ家——莫大な財産をめぐる相続
ピエールという異物
ピエール・ベズーホフは、私生児として育ち、突然莫大な財産を相続します。
彼は社交界に馴染めず、太っていて、不器用で、しかし考えることをやめません。
この小説でいちばん長く迷い続ける人物です。
アンドレイが戦場へ行く
アンドレイ公爵は、名誉を求めて出征します。
しかしアウステルリッツの戦場で負傷し、空を見上げる場面で、それまで信じていた価値が崩れます。
ナターシャが成長し、間違える
ロストフ家のナターシャは、この小説の中心にいます。
彼女は恋をし、婚約し、そして取り返しのつかない過ちを犯します。
この長編は、彼女が少女から大人になるまでを追う物語でもあります。
1812年、ナポレオンがモスクワへ
後半、ナポレオン軍がロシアに侵入します。
モスクワは焼け、人々は逃げ、ピエールは捕虜になります。
そして冬が来て、ナポレオンは退却します。
戦争と平和の3つの読みどころ

1. 戦場の章と日常の章が交互に来る
この小説の構成上の特徴は、章が切り替わることです。
戦場の混乱を書いた直後に、モスクワの屋敷の恋愛が来ます。
戦争が日常を止めないという事実が、構成そのもので示されます。
読みづらく感じるのはここですが、この交互こそが題名の意味です。
2. 「歴史は英雄が動かすのではない」という主張が本文に混ざる
トルストイは物語の合間に、自分の歴史観を論じる文章を挟みます。
要旨は一貫しています。ナポレオンが歴史を動かしたのではない、無数の人間の小さな行為の総和が動かしたのだ、と。
小説の中に論文が入っている——これを冗長と見るか、この作品の核と見るかで評価が割れます。
3. ピエールが答えにたどり着く場所
ピエールは財産、結婚、秘密結社、思想と、次々に何かを試して失敗します。
彼が変わるのは、捕虜になって何も持たなくなってからです。
持っているものを全部失ってから見つかるものがある——この長い迂回のために、この小説は長いのだと言えます。
戦争と平和の訳の選び方|4巻・6巻・6巻

| 文庫 | 訳者 | 巻数 | 刊行 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 新潮文庫 | 工藤精一郎 | 全4巻 | 第一巻1972年3月22日(688ページ・1,155円税込) | いちばん冊数が少ない。1冊が厚い |
| 岩波文庫 | 藤沼貴 | 全6巻 | — | 全6冊セットの販売あり |
| 光文社古典新訳文庫 | 望月哲男 | 全6巻 | 第1巻2020年1月/第6巻2021年9月14日で完結 | 現代の日本語による新訳。もっとも新しい |
出典:新潮社、岩波書店(全6冊セット)、光文社『戦争と平和 6』、openBD(2026年9月22日時点)
選び方の目安です。
- 冊数を減らしたい・持ち運びを減らしたい → 新潮文庫(全4巻)
- 注と解説を重視したい → 岩波文庫(全6巻)。セット販売がある
- いちばん新しい日本語で読みたい → 光文社古典新訳文庫(全6巻)。2021年9月に完結したばかり
3系統とも全訳です。巻数の違いは分冊の仕方の違いであって、内容の増減ではありません。
戦争と平和の読了時間と難易度
新潮文庫は第一巻だけで688ページあり、全4巻の通読は50〜60時間が目安です。
難所は3つです。
- ロシア人名——同じ人物が正式名・愛称・爵位で呼び分けられます。人物一覧に付箋を貼ってください
- 歴史論の章——物語が止まり、トルストイの歴史観が続く箇所があります
- 登場人物が多い——3つの家を先に頭に入れておくと、崩れにくくなります
ロシア文学が初めてなら、先に罪と罰を読むほうが挫折しにくいです。主人公が1人で、期間も短いためです。
戦争と平和に関するよくある質問
全何巻ですか
訳によって違います。新潮文庫は全4巻、岩波文庫は全6巻、光文社古典新訳文庫は全6巻です。いずれも全訳で、分冊の仕方が違うだけです。
どの訳がいちばん新しいですか
光文社古典新訳文庫(望月哲男訳)です。第1巻が2020年1月、第6巻が2021年9月14日に出て完結しました。
戦争の話ですか
戦場の章と、舞踏会や領地経営といった日常の章が交互に来ます。題名どおり、戦争と平和の両方が書かれます。
ドストエフスキーとどちらから読むべきですか
『罪と罰』からをおすすめします。主人公が1人で期間も短く、筋が追いやすいためです。本作は登場人物が多く、分量も大きく上回ります。カラマーゾフの兄弟と並べて考えるなら、本作はさらにその先です。
途中で挫折しやすい場所はどこですか
歴史論の章です。物語が止まってトルストイの歴史観が続きます。ここは飛ばしても筋は追えますが、作者の主張はこの部分にあります。
まとめ|戦争と日常が交互に来る、50時間の長編
- 『戦争と平和』はナポレオンのロシア侵入を背景に、3つの貴族の家を追う長編
- 戦場の章と日常の章が交互に来る構成そのものが、題名の意味
- トルストイの歴史観を論じる文章が本文に挟まる
- 訳は新潮4巻/岩波6巻/光文社6巻。光文社版は2021年9月に完結した最新訳
冊数を減らすなら新潮、いちばん新しい日本語なら光文社。内容はどれも全訳です。
長編や積んだままの本ほど、聴くと最後までたどり着けます。
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