『罪と罰』は、ロシアの作家ドストエフスキーが1866年に発表した純文学の長編で、貧しさに追い詰められた元大学生ラスコーリニコフが、高利貸しの老婆を殺したあとに何を考え、どう追い詰められていくかを追う物語です。日本語訳は新潮文庫(全2巻)・光文社古典新訳文庫(全3巻)・岩波文庫(全3巻)の3系統があり、巻数も価格も違います。この記事では、あらすじ・読みどころに加えて、どの訳を選ぶかを整理します。
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- 1866年発表・殺人は物語の序盤で起こる
- 日本語訳は新潮2巻/光文社3巻/岩波3巻の3系統
- 新潮文庫〔上〕は592ページ・990円(税込)
罪と罰とは|犯人も動機も最初から分かっている小説
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 著者 | フョードル・ドストエフスキー(1821-1881) |
| 原著刊行 | 1866年 |
| 舞台 | ペテルブルグ(現サンクトペテルブルグ)の夏 |
| 主人公 | ラスコーリニコフ(元大学生) |
| 日本語訳 | 新潮文庫(工藤精一郎訳・全2巻)/光文社古典新訳文庫(亀山郁夫訳・全3巻)/岩波文庫(江川卓訳・全3巻) |
出典:新潮社『罪と罰〔上〕』、openBD(2026年9月20日時点)
この小説には推理の要素がありません。誰が殺したのかも、なぜ殺したのかも、読者は最初から知っています。
物語が追うのは、殺したあとの男の頭の中です。
罪と罰のあらすじ|計画から自首まで

屋根裏部屋の学生
ラスコーリニコフは、学費が払えず大学をやめた青年です。
ペテルブルグの狭い屋根裏部屋で、家賃も滞納しています。
彼はある考えを温めています。「非凡な人間には、社会のために法を踏み越える権利がある」という理屈です。
老婆を殺す
彼は高利貸しの老婆を斧で殺します。
しかしそこへ、予定になかった老婆の妹リザヴェータが帰ってきます。
彼は彼女も殺します。
計画は最初の一歩で狂います。この誤算が、以後ずっと彼を苦しめます。
誰も彼を捕まえない
奇妙なことに、物語はここから追跡劇になりません。
証拠は出てこず、逮捕もされません。
代わりに、予審判事ポルフィーリイが彼のまわりをうろつき、確証のないまま話しかけてきます。
ソーニャという存在
もう一人、彼の前に現れるのがソーニャです。
家族を養うために体を売っている少女で、信仰を失っていません。
この二人のやり取りが、小説の後半の中心になります。
そして物語は、彼が自首するかどうかへ向かいます。
罪と罰の3つの読みどころ

1. 追い詰めるのが警察ではなく本人の頭
この小説で主人公を壊していくのは、捜査でも証拠でもありません。
自分は非凡な人間の側にいるはずだった——その前提が、殺したあとの自分の反応によって崩れていきます。吐き、倒れ、うわごとを言い、人を避ける。
理屈のほうが先に壊れるという構造が、この小説をミステリと別のものにしています。
2. ポルフィーリイが証拠を出さない
予審判事ポルフィーリイは、物的証拠を突きつけません。
世間話をしながら、相手が自分から崩れるのを待ちます。
この駆け引きの場面は、後世の犯罪小説に繰り返し引用されてきた型です。
3. 舞台がほぼ9日間に収まっている
600ページを超える長編ですが、本編で描かれる出来事はおおむね数日から9日ほどの範囲に収まります。
場面は屋根裏部屋、階段、酒場、警察署、川べりを行ったり来たりするだけです。移動の少なさと、内面の激しさの差がこの作品の体感をつくっています。
罪と罰の訳の選び方|3系統の違い

日本語で読めるのは主に3系統です。本編は同じですが、巻数・価格・訳文の性格が違います。
| 文庫 | 訳者 | 巻数 | ISBN | 本体価格 |
|---|---|---|---|---|
| 新潮文庫 | 工藤精一郎 | 全2巻 | 上 9784102010211 / 下 9784102010228 | 上990円・下1,100円(税込) |
| 光文社古典新訳文庫 | 亀山郁夫 | 全3巻 | 9784334751685 / 9784334751739 / 9784334751845 | 各819〜876円 |
| 岩波文庫 赤613 | 江川卓 | 全3巻 | 9784003261354 / 9784003261361 / 9784003261378 | 760円・700円・760円 |
出典:openBD、新潮社(2026年9月20日時点)
選び方の目安です。
- 冊数を減らしたい/まず通読したい → 新潮文庫(2冊で済む唯一の選択肢)
- 現代の日本語で読みたい → 光文社古典新訳文庫(2008〜2009年刊の新訳)
- 注を厚く読みたい → 岩波文庫(江川卓訳)
長編なので、書店で最初の数ページを読み比べて合うほうを選ぶのが確実です。3系統とも省略のない全訳です。
罪と罰の読了時間と難易度
新潮文庫〔上〕が592ページで、上下巻の通読は18〜24時間が目安です。
つまずきやすいのはロシア人名です。同じ人物が「名前」「父称つきの正式名」「愛称」で呼び分けられるため、別人だと思ってしまうことがあります。
対策は1つです。巻頭または巻末の人物一覧に付箋を貼り、分からなくなったら戻ること。主要人物は10人ほどなので、序盤を越えれば慣れます。
思想の予備知識は要りません。ラスコーリニコフの理屈は作中で本人が説明します。
罪と罰に関するよくある質問
ミステリですか
違います。犯人も動機も最初から読者に明かされています。追うのは捜査ではなく、殺したあとの主人公の心理です。
どの訳を買えばいいですか
冊数を減らしたいなら新潮文庫(全2巻)、現代の日本語なら光文社古典新訳文庫(全3巻)、注が厚いのは岩波文庫(全3巻)です。本編はどれも全訳です。
『カラマーゾフの兄弟』とどちらから読むべきですか
『罪と罰』からをおすすめします。主人公が1人で、扱う期間も短く、筋が追いやすいためです。カラマーゾフの兄弟は登場人物が多く、長さも倍近くあります。
人名が覚えられません
同じ人物が複数の呼び名で登場します。人物一覧を開いたまま読んでください。主要人物は10人ほどです。
椎名林檎さんの曲と関係がありますか
同名の楽曲がありますが、この小説とは別のものです。
電子版はセールとポイント還元で実質の支払いが下がることがあります。紙と電子で価格が違うので、Amazonで確認してください。
まとめ|証拠ではなく、自分の理屈に追い詰められる話
- 『罪と罰』は高利貸しの老婆を殺した元大学生の、その後を追う1866年の長編
- 犯人も動機も最初から分かっている。追うのは捜査ではなく主人公の頭の中
- 計画は予定外の第二の殺人で最初の一歩から狂う
- 訳は新潮2巻/光文社3巻/岩波3巻。冊数を減らすなら新潮文庫
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