『犬神家の一族(いぬがみけのいちぞく)』は、横溝正史の金田一耕助シリーズを代表する長編であり、「横溝正史といえばこれ」と真っ先に挙げられることの多い一作です。信州財界の巨頭・犬神佐兵衛が遺した異様な遺言状が、三人の娘とその息子たちを相続争いへ引きずり込み、やがて惨劇へと発展していきます。1976年に市川崑監督・石坂浩二さん主演で映画化されて社会現象となり、以後も繰り返し映像化されてきました。この記事では、あらすじ・読みどころ・映像化まで、トリックと犯人には一切触れずに紹介します。
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- 金田一耕助シリーズでもっとも知名度の高い代表作
- 1976年の市川崑監督版で社会現象になった一冊
- 角川文庫で入手しやすく電子書籍版もあり
犬神家の一族とは|遺産相続ミステリの代名詞となった一冊
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 著者 | 横溝正史 |
| ジャンル | 本格探偵小説/遺産相続ミステリ |
| 初出 | 『キング』1950年1月号〜1951年5月号 連載 |
| 文庫 | 角川文庫 |
| 文庫ISBN | 978-4-04-130405-1 |
| 舞台 | 昭和20年代・那須湖畔の犬神家本宅 |
| 発端 | 犬神佐兵衛の死と、家宝「斧・琴・菊」の相続をめぐる遺言状 |
| 映像化 | 1954年映画・1976年映画(市川崑/石坂浩二)・2006年映画(市川崑/石坂浩二)ほかテレビドラマ多数 |
| 関連作 | 金田一耕助シリーズを読む順番・横溝正史のおすすめ |
『犬神家の一族』は、1950年1月号から1951年5月号まで雑誌『キング』に連載された長編です。
遺言状をめぐる一族の争いという構図は、その後の日本のミステリ・ドラマが繰り返し使ってきた型の原点にあたります。
1976年に市川崑監督・石坂浩二さんの金田一耕助で映画化された際の反響が大きく、原作の知名度も一気に押し上げられました。
2006年には同じ市川崑監督・石坂浩二さんの布陣でセルフリメイクも公開されています。
犬神家の一族のあらすじ|異様な遺言状が読み上げられる

舞台は昭和20年代、那須湖畔に建つ犬神家の本宅です。
信州財界の巨頭・犬神佐兵衛の死
犬神家を一代で築き上げたのは、信州財界の巨頭と呼ばれた犬神佐兵衛でした。
その佐兵衛が、81歳で世を去ります。
佐兵衛には正妻がなく、それぞれ母の異なる三人の娘——松子・竹子・梅子がいました。
そして三人にはそれぞれ息子が一人ずつ、佐清・佐武・佐智がいます。
家宝「斧・琴・菊」をめぐる条件付きの遺言
読み上げられた遺言状は、常識を外れた内容でした。
犬神家の家宝である「斧・琴・菊」の相続権を、佐兵衛の恩人の孫にあたる野々宮珠世に与えるというのです。
しかもそこには、珠世が佐清・佐武・佐智の三人の中から配偶者を選ぶこと、という条件が付いていました。
一族が動きはじめる
一つの遺言が、三つの家系の思惑をいっせいに動かします。
血のつながりと相続、面子と過去——それらが絡み合ったところに、金田一耕助が呼ばれることになります。
やがて起こる事件がどのような形をとるのかは、ぜひご自身で確かめてください。
犬神家の一族の3つの読みどころ

1. 「遺言状」というたった一枚の紙が持つ破壊力
本作の発端は、殺人ではなく一枚の遺言状です。
その条件が読み上げられた瞬間から、一族の関係がすべて組み替わる——この構図の鮮やかさが、本作が長く読み継がれる理由です。
動機が最初から全員に配られているため、読者は最初から疑うべき相手を大勢抱えたまま読み進めることになります。
2. 一族の系図そのものが謎の設計図になっている
三人の娘、三人の孫、そして遺言が指名する一人の女性。
この配置が、そのまま物語の構造として機能します。
『八つ墓村』が土地の伝説を骨格にしたのに対し、本作は家系図を骨格にしているといえます。
登場人物の関係を押さえるほど面白くなるタイプの作品です。
3. 映像化が焼き付けた強烈なイメージ
1976年の市川崑監督版が残したビジュアルの印象は、日本の映像史でも屈指のものです。
原作を読む前からいくつかの場面を知っている読者が多いという、珍しい立ち位置の小説でもあります。
ただし有名な場面が持つ意味は原作を読んで初めて腑に落ちるため、知っているつもりで読み始めても十分に驚けます。
犬神家の一族のシリーズ内での位置づけ

| 作品 | 発表年 | 骨格になっているもの |
|---|---|---|
| 本陣殺人事件 | 1946年 | 雪に閉ざされた離れ座敷の密室 |
| 獄門島 | 1947-48年 | 俳句の句に見立てられた死 |
| 八つ墓村 | 1949-51年 | 落武者伝説と村の祟り |
| 犬神家の一族 | 1950-51年 | 遺言状と一族の系図 |
| 悪魔の手毬唄 | 1957-59年 | 村に伝わる手毬唄の歌詞 |
金田一耕助シリーズは、作品ごとに「謎の骨格になるもの」が違います。
本作はその中でも、家と財産という、もっとも人間くさい素材を扱っています。
知名度で選ぶなら本作、本格ミステリの完成度で選ぶなら『獄門島』、読みやすさで選ぶなら『八つ墓村』——という選び方ができます。
全体の並びは金田一耕助シリーズを読む順番にまとめています。
犬神家の一族の映像化と関連作品
『犬神家の一族』は、金田一耕助シリーズでもとりわけ多く映像化されてきました。
最初の映画化は1954年、渡辺邦男監督・片岡千恵蔵さんの金田一耕助によるものです。
そして1976年、市川崑監督・石坂浩二さん主演の映画版が大きな反響を呼び、以後の金田一耕助像を決定づけました。
テレビドラマでは1977年に工藤栄一さん演出・古谷一行さん、1990年に松尾昭典さん演出・中井貴一さんが金田一耕助を演じています。
2006年には、市川崑監督・石坂浩二さんという同じ布陣でのセルフリメイク版も公開されました。
| 関連作品 | 概要 | 関係性 |
|---|---|---|
| 金田一耕助シリーズを読む順番 | 主要長編の発表順と読む順番 | シリーズの全体像がつかめる |
| 獄門島 | 孤島の俳句見立て殺人 | 本格の完成度で名高い代表作 |
| 八つ墓村 | 落武者伝説の残る村の惨劇 | 2026年に新作映画が公開 |
| 悪魔の手毬唄 | 手毬唄になぞらえた連続殺人 | 見立て殺人の系譜 |
| 本陣殺人事件 | 金田一耕助の初登場作 | シリーズの出発点 |
犬神家の一族の読了時間と難易度
- 読了時間目安: 約5〜6時間(角川文庫)
- 難易度: ★★★☆☆(人物が多いが、系図を押さえれば筋は明快)
- おすすめタイプ: 遺産相続ミステリが好きな人/横溝正史の代表作から入りたい人/映画版を観て原作が気になった人
最初に犬神家の系図をメモしておくと、以後がとても楽になります。
松子・竹子・梅子の三姉妹と、佐清・佐武・佐智の三人——この六人の対応だけ覚えれば十分です。
すでに映画版で有名な場面を知っている人でも、その場面がなぜそうなるのかは原作で初めて分かります。
犬神家の一族に関するよくある質問
Q. 犬神家の一族はどんな話ですか?
A. 信州財界の巨頭・犬神佐兵衛が死に、家宝「斧・琴・菊」の相続権を恩人の孫・野々宮珠世に与えるという条件付きの遺言状が読み上げられたことから、一族が争いに巻き込まれ惨劇が起こる物語です。
金田一耕助が那須湖畔の犬神家を訪れ、事件に挑みます。
Q. 犬神家の一族の登場人物が多くて混乱しませんか?
A. 押さえるべきは六人だけです。
佐兵衛の三人の娘(松子・竹子・梅子)と、それぞれの息子(佐清・佐武・佐智)の対応関係をメモしておけば、以降はスムーズに読めます。
そこに遺言状が指名する野々宮珠世を加えれば、物語の骨格はつかめます。
Q. 犬神家の一族から読み始めても大丈夫ですか?
A. 問題ありません。
金田一耕助シリーズは各作品が独立して読めるため、知名度の高い本作から入る読者も多くいます。
探偵の登場順を追いたい場合は『本陣殺人事件』から読むとよいでしょう。
Q. 犬神家の一族は映像化されていますか?
A. 繰り返し映像化されています。
1954年の映画(渡辺邦男監督・片岡千恵蔵)、1976年の映画(市川崑監督・石坂浩二)、2006年の映画(市川崑監督・石坂浩二によるセルフリメイク)のほか、テレビドラマは1977年(古谷一行)、1990年(中井貴一)などがあります。
まとめ|犬神家の一族は日本の遺産相続ミステリの原点
『犬神家の一族』は、横溝正史が1950年から『キング』に連載した長編で、一枚の遺言状が一族を争いへ引きずり込む構図を確立した代表作です。
三人の娘、三人の孫、条件付きの相続——家系図そのものが謎の設計図になっている構成は、いまも数多くの作品に受け継がれています。
横溝正史を一冊だけ読むなら、知名度と入りやすさで本作を選ぶのが無難です。
読み終えたら、金田一耕助シリーズを読む順番に沿って『獄門島』や『悪魔の手毬唄』へ進むのがおすすめです。
- 角川文庫で入手しやすく電子書籍版もあり
- 横溝正史を1冊だけ読むならまずこれ
- 映画版で知っている場面も原作で意味が分かる
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犬神家の一族・関連作品の読書ガイド
出典・参考情報
- openBD 書誌情報(ISBN 9784041304051「犬神家の一族」角川書店)
- Wikipedia「犬神家の一族」項目(『キング』1950年1月号〜1951年5月号連載/那須湖畔の犬神家本宅・犬神佐兵衛の遺言状と家宝「斧・琴・菊」・三人の娘 松子/竹子/梅子と三人の孫 佐清/佐武/佐智・野々宮珠世/映像化: 1954年映画 渡辺邦男・片岡千恵蔵、1976年映画 市川崑・石坂浩二、1977年ドラマ 工藤栄一・古谷一行、1990年ドラマ 松尾昭典・中井貴一、2006年映画 市川崑・石坂浩二/最終確認: 2026年8月6日)




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