『本陣殺人事件(ほんじんさつじんじけん)』は、横溝正史が戦後最初に発表した長編推理小説であり、名探偵・金田一耕助が初めて登場した記念すべき一作です。江戸時代から続く宿場本陣の旧家・一柳家。その婚礼の夜、新郎新婦が離れ座敷で惨殺され、一面に降り積もった雪が離れを完全な密室にしていました。1948年には第1回探偵作家クラブ賞を受賞しています。この記事では、あらすじ・読みどころ・角川文庫版に併録された2編・映像化の情報まで、トリックと犯人には一切触れずに紹介します。
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- 第1回探偵作家クラブ賞(1948年)受賞作
- 名探偵・金田一耕助が初登場する記念すべき第1作
- 角川文庫版は表題作+短編2編を収録・電子書籍版あり
本陣殺人事件とは|金田一耕助シリーズの出発点となった一冊
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 著者 | 横溝正史 |
| ジャンル | 本格探偵小説/密室ミステリ |
| 初出 | 『宝石』1946年4月号〜12月号 連載 |
| 単行本 | 1947年11月 |
| 文庫 | 角川文庫〈金田一耕助ファイル2〉1973年4月20日 |
| 文庫ISBN | 978-4-04-130408-2 |
| 受賞 | 第1回探偵作家クラブ賞(1948年) |
| シリーズ | 金田一耕助シリーズ 第1作(金田一耕助 初登場) |
| 収録作 | 本陣殺人事件/車井戸はなぜ軋る/黒猫亭事件 |
| 関連作 | 金田一耕助シリーズを読む順番・横溝正史のおすすめ |
『本陣殺人事件』は、1946年に探偵小説専門誌『宝石』へ連載された、横溝正史の戦後初の長編推理小説です。
そして何より、のちに国民的な名探偵となる金田一耕助が、この作品ではじめて読者の前に現れます。
翌々年の1948年には第1回探偵作家クラブ賞に選ばれ、戦後日本の本格探偵小説の再出発を告げる一作となりました。
現在もっとも手に入れやすいのは角川文庫〈金田一耕助ファイル2〉で、表題作に加えて「車井戸はなぜ軋る」「黒猫亭事件」の2編を併録しています。
本陣殺人事件のあらすじ|婚礼の夜、雪の離れで起きた惨劇

舞台は岡山の旧家・一柳家。
江戸時代から続く宿場本陣を務めた家柄で、村では格式の高い家として知られています。
婚礼の夜に響いた琴の音
物語は、一柳家の当主・賢蔵の婚礼から動きはじめます。
祝いの夜、屋敷の離れ座敷から、突然、琴の音が響きわたります。
そして人々が駆けつけたとき、離れの中では新郎新婦が惨殺されていました。
雪が閉ざした完全な密室
離れの周囲には雪が一面に降り積もっていました。
にもかかわらず、そこには犯人が出入りした痕跡がまったく残っていません。
出入りできたはずのない場所で、二人は殺されている——離れは完全な密室と化していたのです。
呼び寄せられた若き探偵
事態を前に、一柳家の縁者は一人の青年を岡山へ呼び寄せます。
もじゃもじゃ頭に袴、話すときにどもる癖のある、風采の上がらない若者。
それが金田一耕助でした。
この一冊から、日本ミステリを代表する名探偵の物語が始まります。
本陣殺人事件の3つの読みどころ

1. 金田一耕助という探偵が生まれた瞬間
本作の最大の価値は、金田一耕助の初登場作であることそのものです。
のちの『獄門島』や『犬神家の一族』で見せる飄々とした佇まいは、すでにこの一冊から現れています。
華々しい名探偵像とは正反対の、頼りなげな青年として登場するところに、横溝正史の狙いが表れています。
2. 日本家屋でしか成立しない密室の設計
密室ミステリは西洋の館を舞台にしたものが多いなかで、本作は日本家屋の離れ座敷という空間で密室を組み立てています。
雪・障子・縁側・琴といった和の要素が、そのまま謎の構成要素になっているのが読みどころです。
『十角館の殺人』以降の新本格が館を使ったのに対し、その半世紀近く前に旧家の離れで同じことをやってのけた先駆性があります。
3. 探偵小説そのものへの目配せ
作中には、探偵小説の名作に言及する場面が織り込まれています。
「密室ものとはどういうジャンルなのか」を作品自身が語りながら、その上でひとつの密室を提示するという構えです。
本格探偵小説を愛する読者に向けて書かれた一冊であることが、読み進めるほど伝わってきます。
本陣殺人事件の位置づけ|戦後探偵小説の再出発点として

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表時期 | 1946年(終戦の翌年) |
| 意義 | 戦時中に途絶えた探偵小説の再開を告げた作品 |
| 賞 | 第1回探偵作家クラブ賞(1948年) |
| シリーズ上の位置 | 金田一耕助シリーズの第1作 |
| 続く代表作 | 獄門島(1947-48年)・八つ墓村(1949-51年) |
戦時下、探偵小説は事実上書けない時期が続きました。
その空白の直後に発表されたのが本作であり、日本の探偵小説がふたたび動き出す合図となった一冊です。
翌1947年からは『獄門島』の連載が始まり、そこから横溝正史の代表作が立て続けに生まれていきます。
本作を先に読んでおくと、金田一耕助という探偵の「はじまり」を知った状態でシリーズを追えるのが利点です。
一方で、本格ミステリとしての完成度で選ぶなら『獄門島』から入る読者も多く、どちらから読んでも物語は理解できます。
本陣殺人事件の映像化と関連作品
『本陣殺人事件』は、繰り返し映像化されてきた作品です。
1947年には映画『三本指の男』として片岡千恵蔵さん主演で映画化され、以後もたびたび映像作品になっています。
1975年には中尾彬さん主演で映画化、1977年と1983年には古谷一行さん主演、1992年には片岡鶴太郎さん主演でテレビドラマ化されました。
| 関連作品 | 概要 | 関係性 |
|---|---|---|
| 金田一耕助シリーズを読む順番 | 主要長編の発表順と読む順番 | シリーズの全体像がつかめる |
| 獄門島 | 瀬戸内海の孤島の見立て殺人 | 本作の翌年に連載開始した代表作 |
| 八つ墓村 | 落武者伝説の残る村の連続殺人 | 伝奇色の強い人気作 |
| 犬神家の一族 | 旧家の遺言状をめぐる惨劇 | 知名度がもっとも高い一作 |
| 占星術殺人事件 | 島田荘司のデビュー作 | 本格の系譜を継ぐ後年の傑作 |
シリーズを順に追いたいなら、本作から『獄門島』へ進むのが自然な流れです。
横溝作品全体の見取り図は横溝正史のおすすめ・代表作ガイドにまとめています。
本陣殺人事件の読了時間と難易度
- 読了時間目安: 約3〜4時間(角川文庫・表題作のみ。併録2編を含めると約5時間)
- 難易度: ★★★☆☆(旧仮名づかいではないが、戦後間もない時代の風俗描写に慣れが必要)
- おすすめタイプ: 金田一耕助シリーズを最初から読みたい人/和の密室ミステリを読みたい人/本格探偵小説の古典を押さえたい人
長編としては短めで、密室の状況が明快なので読み進めやすい作品です。
一柳家の人物関係だけ、最初に軽く整理しておくと迷いません。
併録の「車井戸はなぜ軋る」「黒猫亭事件」も金田一耕助ものなので、一冊で複数の事件を味わえるのもお得です。
本陣殺人事件に関するよくある質問
Q. 本陣殺人事件はどんな話ですか?
A. 岡山の旧家・一柳家の婚礼の夜、雪に囲まれた離れ座敷で新郎新婦が惨殺され、その離れが完全な密室だったという事件を、金田一耕助が解き明かす物語です。
横溝正史が戦後最初に発表した長編推理小説で、金田一耕助の初登場作にあたります。
Q. 本陣殺人事件はどんな賞を受賞していますか?
A. 1948年の第1回探偵作家クラブ賞を受賞しています。
探偵作家クラブ賞はのちの日本推理作家協会賞につながる賞で、本作はその記念すべき第1回に選ばれました。
Q. 金田一耕助シリーズはこの作品から読むべきですか?
A. 金田一耕助の初登場作なので、シリーズを最初から追いたい人には本作が出発点になります。
ただし各作品は独立して読めるため、本格ミステリとしての完成度で選ぶなら『獄門島』、知名度で選ぶなら『犬神家の一族』から入るという読み方もあります。
Q. 角川文庫版にはほかにどんな作品が入っていますか?
A. 表題作「本陣殺人事件」のほかに、「車井戸はなぜ軋る」「黒猫亭事件」の2編を併録しています。
いずれも金田一耕助が登場する作品で、角川文庫では〈金田一耕助ファイル2〉として刊行されています。
まとめ|本陣殺人事件は金田一耕助のすべてが始まる一冊
『本陣殺人事件』は、横溝正史が1946年に発表した戦後最初の長編推理小説であり、第1回探偵作家クラブ賞を受賞した金田一耕助シリーズの第1作です。
婚礼の夜、雪の離れ、響く琴の音、そして完全な密室——和の情景がそのまま謎の部品として組み上げられていく構成は、いま読んでも古びていません。
シリーズを最初から読みたい人にとって、ここが出発点です。
読み終えたら、金田一耕助シリーズを読む順番に沿って『獄門島』・『八つ墓村』へ進むのがおすすめです。
- 角川文庫〈金田一耕助ファイル2〉・電子書籍版あり
- 表題作+「車井戸はなぜ軋る」「黒猫亭事件」の3編収録
- 金田一耕助シリーズを最初から読みたい人の1冊目に
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本陣殺人事件・関連作品の読書ガイド
出典・参考情報
- KADOKAWA『金田一耕助ファイル2 本陣殺人事件』製品情報(角川文庫・ISBN 978-4-04-130408-2・1973年4月20日/収録作: 本陣殺人事件、車井戸はなぜ軋る、黒猫亭事件)
- openBD 書誌情報(ISBN 9784041304082「本陣殺人事件 : 他2篇」角川書店)
- Wikipedia「本陣殺人事件」項目(『宝石』1946年4月〜12月連載/第1回探偵作家クラブ賞1948年/映像化: 1947年映画『三本指の男』片岡千恵蔵、1975年映画 中尾彬、1977年・1983年テレビドラマ 古谷一行、1992年テレビドラマ 片岡鶴太郎/最終確認: 2026年8月6日)




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