『存在のすべてを』は、塩田武士が書いたミステリーの長編で、平成3年に神奈川県で起きた2児同時誘拐事件から30年後、当時警察を担当していた新聞記者が被害男児の「現在」を知り、そこからある写実画家の存在が浮かび上がる物語です。第9回渡辺淳一文学賞を受賞し、2024年の本屋大賞で第3位に入りました。2026年4月に朝日文庫で文庫化されています。この記事では、あらすじ・読みどころ・版の選び方まで紹介します。
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- 第9回渡辺淳一文学賞受賞・2024年本屋大賞第3位
- 2026年4月に朝日文庫で文庫化(568ページ)
- 2027年の映画化が決定している
存在のすべてをとは|30年をまたぐ未解決事件の長編
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 著者 | 塩田武士 |
| 題材 | 平成3年・神奈川県で起きた2児同時誘拐事件(作中の設定) |
| 受賞 | 第9回渡辺淳一文学賞(2024年4月) |
| 本屋大賞 | 第21回(2024年)第3位 |
| 単行本 | 朝日新聞出版・2023年9月30日・472ページ |
| 文庫 | 朝日文庫・2026年4月・568ページ・990円+税 |
| 映像化 | 2027年映画化決定 |
出典:版元ドットコム(朝日文庫)、prizesworld・塩田武士(2026年9月18日時点)
著者は『罪の声』で山田風太郎賞を受賞した、実在の事件を下敷きにした構成で知られる作家です。本作もその系譜にあります。
存在のすべてをのあらすじ|30年後に開く事件

平成3年、2児が同時に誘拐される
物語の起点は、平成3年に神奈川県で起きた2児同時誘拐事件です。
この事件は未解決のまま、異様な展開をたどりました。
30年後、記者のもとに届く知らせ
主人公は、当時警察を担当していた新聞記者の門田です。
旧知の刑事が亡くなったことをきっかけに、門田は被害男児の「現在」を知ることになります。
刑事たちの求め
事件の真実を追い続けてきた刑事たちから求められ、門田はもう一度、30年前の事件と向き合うことを決めます。
浮かび上がる写実画家
取材を重ねるなかで、ある写実画家の存在が浮かび上がってきます。
なぜ画家なのか。
その接続が分かるところまでが、この長編の射程です。
存在のすべてをの3つの読みどころ

1. 事件小説と芸術小説が同じ軸で動く
誘拐事件を追う記者の物語でありながら、写実絵画という主題が対等な重みで置かれています。
写実画家が一枚の絵にかける時間、対象をどこまで見るかという姿勢が、そのまま事件を30年追い続けた者たちの姿勢と重なります。
版元は本作を「質感なき時代に『実』を見つめる」作品だと紹介しています。
2. 取材する側が主人公であることの意味
門田は刑事ではなく新聞記者です。
逮捕する力も、捜査資料に自由に触れる権限もありません。
できるのは、話を聞くことだけ。
この制約があるため、本作では誰が何を語るか、語らないかが事件の形そのものになります。
3. 被害者の「その後」を正面から書く
多くの誘拐ものは、事件の解決で幕を閉じます。
本作が扱うのは、事件から30年が経った人間がどう生きてきたかです。
解決よりも、その後の時間のほうが長い。その当たり前を長編の中心に据えたところが、渡辺淳一文学賞の評価につながったと考えられます。
存在のすべてをの受賞歴|「このミス上位」ではない

本作の評価は次のとおりです。受賞・順位を取り違えやすいので整理しておきます。
| 賞・ランキング | 回 | 結果 |
|---|---|---|
| 渡辺淳一文学賞 | 第9回(2024年4月) | 受賞 |
| 本屋大賞 | 第21回(2024年) | 第3位 |
| 「本の雑誌」2023年度ベスト10 | — | 第1位 |
| キノベス!2024 | 第21回 | 第14位 |
| このミステリーがすごい! | 第36回(2023年12月) | 第26位 |
出典:prizesworld・塩田武士、版元ドットコム(朝日文庫の紹介文)(2026年9月18日時点)
ミステリーランキングでは上位ではありません。誘拐事件を扱いながら、評価されたのは謎解きの意外性より人物の描き方だった、という位置づけです。
存在のすべてをの版と入手方法
2026年4月に朝日文庫で文庫化されました。これから買うなら文庫版が手に取りやすい選択です。
| 版 | 出版社 | 刊行 | ページ |
|---|---|---|---|
| 単行本 | 朝日新聞出版 | 2023年9月30日 | 472ページ |
| 文庫 | 朝日文庫 | 2026年4月 | 568ページ |
存在のすべてをの読了時間と難易度
文庫568ページで、一般的な読書速度では7〜9時間が目安です。
時制が30年をまたぐため、序盤は「いつの話か」を確認しながら読む必要があります。人物も多く、当時の担当と現在の関係者が交差します。
一方で、新聞記者の取材という形で情報が出てくるので、専門知識は要りません。警察小説の手続きに不慣れでも読み進められます。
存在のすべてをに関するよくある質問
実在の事件がもとになっていますか
作中の2児同時誘拐事件は、平成3年の神奈川県という設定で書かれています。著者は『罪の声』でも実在の事件を下敷きにした構成を取っていますが、本作の事件が特定の実際の事件を指すという公式の説明は確認できていません。
文庫は出ていますか
出ています。2026年4月に朝日文庫(568ページ・990円+税)として刊行されました。
どの賞を受賞しましたか
第9回渡辺淳一文学賞(2024年4月)を受賞しています。2024年の本屋大賞では第3位、「本の雑誌」2023年度ベスト10では第1位でした。
映画化されますか
版元の紹介文に2027年映画化決定と記載されています。
塩田武士の作品を初めて読みます
『罪の声』(第7回山田風太郎賞受賞)が代表作です。実在の事件を題材にした構成という点で共通しているため、どちらから読んでも構いません。
まとめ|30年後に開いた事件と、一枚の絵
- 『存在のすべてを』は、平成3年の2児同時誘拐事件から30年後を描いた長編
- 追うのは刑事ではなく新聞記者の門田で、できるのは話を聞くことだけ
- 事件小説と写実絵画が同じ重さで並走し、「実を見る」という主題で結ばれる
- 第9回渡辺淳一文学賞受賞・2024年本屋大賞第3位。2026年4月に朝日文庫化、2027年映画化決定
解決ではなく、そのあとの30年を書いた小説です。
長編や積んだままの本ほど、聴くと最後までたどり着けます。
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