『騎士団長殺し(きしだんちょうごろし)』は、村上春樹が2017年に発表した2部構成の長編小説です。妻に別れを告げられた肖像画家が、小田原の山中にある老日本画家のアトリエで暮らしはじめ、屋根裏で「騎士団長殺し」と題された一枚の絵を見つける——そこから、井戸のような穴、身長60センチほどの「騎士団長」、二重になった世界が次々と現れます。読み終えたあと「意味がわからない」と感じる人が多い作品でもあります。この記事では、あらすじ・読みどころ・新潮文庫版の巻構成とISBN・映像化の有無・村上春樹を読む順番まで、結末には触れずに整理します。
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- 村上春樹が7年ぶりに書き下ろした2部構成の長編
- 新潮文庫版は第1部・第2部それぞれ上下の全4巻
- 単行本・文庫・電子書籍・COMPLETE BOXまで確認可能
騎士団長殺しとは|村上春樹が2部構成で描いた長編小説
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 著者 | 村上春樹 |
| ジャンル | 長編小説/幻想的リアリズム・芸術小説 |
| 単行本 | 2017年2月24日(新潮社/第1部・第2部同時刊行) |
| 文庫 | 2019年2月〜3月(新潮文庫/全4巻) |
| 文庫ISBN | 978-4-10-100171-5(第1部 顕れるイデア編〔上〕・新潮文庫) |
| テーマ | 絵を描くこと・イデアとメタファー・二重になった世界 |
| 映像化 | 映画化・ドラマ化はされていません(2026年8月時点) |
| 関連作 | 村上春樹の新刊・作品ガイド・1Q84・海辺のカフカ |
『騎士団長殺し』は、村上春樹が2017年2月24日に新潮社から第1部・第2部を同時刊行した長編小説です。
正式なタイトルは、第1部が『騎士団長殺し―第1部 顕れるイデア編―』、第2部が『騎士団長殺し―第2部 遷ろうメタファー編―』。
単行本は第1部が512ページ、第2部が544ページで、2巻あわせて1,000ページを超える大作です。
刊行時には2巻あわせて130万部という初版部数が発表され、深夜のカウントダウン販売が各地で行われました。
新潮文庫版は「全4巻」に分冊されている
文庫で読む場合、第1部・第2部がそれぞれ上下巻に分かれ、合計4冊になります。
「何巻あるのか」で迷いやすいところなので、下表で整理します。
| 巻 | 書名 | 発売日 | ISBN |
|---|---|---|---|
| 1 | 騎士団長殺し―第1部 顕れるイデア編〔上〕― | 2019年2月28日 | 978-4-10-100171-5 |
| 2 | 騎士団長殺し―第1部 顕れるイデア編〔下〕― | 2019年2月28日 | 978-4-10-100172-2 |
| 3 | 騎士団長殺し―第2部 遷ろうメタファー編〔上〕― | 2019年3月28日 | 978-4-10-100173-9 |
| 4 | 騎士団長殺し―第2部 遷ろうメタファー編〔下〕― | 2019年3月28日 | 978-4-10-100174-6 |
単行本なら2冊、文庫なら4冊——これが「巻数が人によって違って聞こえる」理由です。
文庫版4冊をまとめた「騎士団長殺しCOMPLETE BOX(全4巻)」も刊行されています。
読む順番は迷う必要がなく、第1部の上→下→第2部の上→下と、そのまま前から読むのが正解です。
騎士団長殺しのあらすじ|妻に去られた画家が山荘で見つけた一枚の絵

物語の語り手は、注文を受けて肖像画を描いて生計を立てている36歳の画家です。
ある日、妻から突然に別れを告げられ、彼は家を出て東北・北海道をあてもなく車で走り回ります。
放浪の末にたどり着いたのが、美大時代の友人・雨田政彦の父が使っていた、小田原郊外の山中にあるアトリエでした。
屋根裏で見つかる「騎士団長殺し」という絵
アトリエの主は、日本画の大家として知られる雨田具彦。
高齢で療養中の彼が残した家で暮らしはじめた主人公は、ある日屋根裏から、包まれたまま誰にも見せられていない一枚の日本画を見つけます。
その絵に記されていた題こそ、「騎士団長殺し」。
描かれているのは飛鳥時代の装束をまとった人物たちで、モーツァルトのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』の冒頭、騎士団長が刺し殺される場面が、日本の古代に置き換えて描かれているという構図です。
谷向かいの白髪の男と、雑木林の穴
やがて主人公のもとに、谷を挟んだ向かいの豪邸に住む白髪の男・免色渉から、破格の報酬で肖像画を描いてほしいという依頼が舞い込みます。
同じころ、アトリエ裏の雑木林で、小さな祠と石を積んだ塚が見つかります。
塚を掘り起こすと現れたのは、井戸のような深い石室でした。
そして、屋根裏の絵に描かれていたはずの「騎士団長」が、身長60センチほどの姿をとって主人公の前に顕れます。
自らを「イデア」と名乗るその存在をきっかけに、主人公の静かな山荘暮らしは、少しずつ現実の輪郭を失っていきます。
騎士団長殺しの3つの読みどころ

1. 「絵を描くこと」そのものが物語のエンジンになっている
本作の主人公は画家であり、物語は一貫して「描く」という行為とともに進みます。
注文仕事としての肖像画、依頼主の内側を掘り当てようとする筆、そして描きかけのまま止まってしまうカンヴァス。
何かを描こうとすることが、そのまま「見えないものを世界に呼び出してしまう」行為として書かれているのが独特です。
創作論としても読める一方、絵に詳しくない読者でも、アトリエの空気や絵具の手触りの描写だけで引き込まれます。
2. 井戸・二重の世界という、村上作品らしいモチーフの総集編
深い穴、こちら側とあちら側、名前を持たない存在——村上春樹の長編を読んできた人ほど、既視感のある道具立てが次々と出てくることに気づくはずです。
『1Q84』の二つの月や、『海辺のカフカ』の異界への通路と共通する構造が、本作でははっきり「イデア」「メタファー」という言葉を与えられて登場します。
初めて村上作品を読む人には入口として、既読者にはモチーフの再配置を確かめる楽しみとして機能する一冊です。
3. 『ドン・ジョヴァンニ』と日本画が重なる、タイトルの仕掛け
タイトルの「騎士団長殺し」は、作中で主人公が見つける日本画の題名であると同時に、モーツァルトのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』の場面を指しています。
オペラでは、ドン・ジョヴァンニが騎士団長を斬り、その騎士団長が後に石像となって戻ってくる——という筋が知られています。
西洋のオペラの一場面を、飛鳥時代の日本の風俗に移し替えて描くという設定そのものが、本作の「置き換え=メタファー」というテーマを先取りしています。
オペラを知らなくても読めますが、あらすじだけでも押さえておくと、絵の意味が立体的に見えてきます。
騎士団長殺しの2部構成|「イデア」と「メタファー」はどう違うのか

第1部と第2部には、それぞれ「顕れるイデア編」「遷ろうメタファー編」というサブタイトルが付いています。
この2語が、そのまま作品の前半と後半の性格を言い当てています。
| 項目 | 第1部 顕れるイデア編 | 第2部 遷ろうメタファー編 |
|---|---|---|
| サブタイトルの語 | イデア(顕れるもの) | メタファー(遷ろうもの) |
| 物語の動き | 静かな山荘に、異物が「現れる」 | 現れたものに導かれ、「移動する」 |
| 現れる存在 | 騎士団長(身長60センチほど) | 「顔なが」と呼ばれる姿 |
| 主人公の姿勢 | 起きたことを観察し、受け止める | 自ら行動し、向こう側へ踏み出す |
| 読み心地 | 謎が積み上がっていく静けさ | 展開が加速していく緊張 |
第1部は、日常のなかに異物が一つずつ置かれていく静かな時間です。
絵、穴、依頼主、そして騎士団長。それぞれが説明されないまま並べられ、読者は「これは何なのか」を抱えたまま読み進めます。
第2部に入ると、その異物たちが動きはじめ、主人公自身が選択を迫られる側に回ります。
「意味がわからない」という感想が出やすいのは、作者が寓意の答え合わせをしないまま物語を閉じるからで、読み解きの余地が意図的に残されている作品だと考えるのが自然です。
騎士団長殺しと村上春樹の関連作品と読む順番
村上春樹は、恋愛小説から幻想的な長編まで作風の幅が広い作家です。
『騎士団長殺し』はシリーズものではなく単独で読める作品ですが、他の長編と並べて読むと、繰り返されるモチーフがはっきり見えてきます。
| 関連作品 | 概要 | 関係性 |
|---|---|---|
| 村上春樹の新刊・作品ガイド | 作家全体のガイド | 刊行順・作風の総覧 |
| ノルウェイの森 | 喪失を描いた恋愛長編 | 幻想要素の少ない入口 |
| 1Q84 | 二つの月が浮かぶ世界を描く長編 | 二重の世界という共通構造 |
| 海辺のカフカ | 少年と老人の物語が並走する長編 | 異界への通路というモチーフ |
| 純文学小説のおすすめ | 純文学の名作案内 | 同系統の作品を広く探す |
村上春樹を初めて読むなら、幻想要素が控えめな『ノルウェイの森』から入り、『海辺のカフカ』、『1Q84』と進んでから本作へ、という順番が読みやすいと感じます。
逆に、「井戸」「あちら側」といった村上作品の記号を先に体験したい人は、本作から入っても問題ありません。
どの作品も独立した物語なので、刊行順に読む必要はありません。
村上作品以外にも視野を広げたくなったら、純文学小説のおすすめもあわせてご覧ください。
騎士団長殺しの読了時間と難易度
- 読了時間目安: 約15〜20時間(新潮文庫版・全4巻)
- 難易度: ★★★☆☆(文章は平明だが、寓意の解釈に手間取る)
- おすすめタイプ: 長編をじっくり読みたい人/村上春樹の幻想的な作風が好きな人/芸術・創作を描いた小説を読みたい人
一文一文は読みやすく、村上作品らしいテンポで進みます。
一方で、単行本2冊・文庫4冊というボリュームがあり、腰を据えて読む時間が必要です。
「結局あれは何だったのか」が明示されない箇所が多いため、答えを求めて読むと消化不良になりがち。
描写と場面の連なりを味わう読み方のほうが、本作とは相性が良いはずです。
騎士団長殺しに関するよくある質問
Q. 騎士団長殺しはどんな話ですか?
A. 妻に別れを告げられた肖像画家が、小田原の山中にある老日本画家のアトリエで暮らしはじめ、屋根裏で「騎士団長殺し」と題された日本画を見つけたことから、不可解な出来事に巻き込まれていく長編小説です。
雑木林の穴、身長60センチほどの「騎士団長」、谷向かいに住む白髪の男などが物語を動かします。詳しくは村上春樹の作品ガイドもあわせてご覧ください。
Q. 騎士団長殺しは何巻ありますか?
A. 単行本は第1部・第2部の2冊、新潮文庫版はそれぞれが上下に分かれて全4巻です。
文庫は第1部の上下が2019年2月28日、第2部の上下が2019年3月28日に刊行されました。第1部〔上〕のISBNは978-4-10-100171-5です。
Q. 騎士団長殺しは映像化されていますか?
A. 2026年8月時点で、映画化・ドラマ化はされていません。
村上春樹の他作品には映像化された例がありますが、本作は原作小説としてのみ読める作品です。
Q. タイトルの「騎士団長殺し」は何を指していますか?
A. 作中で主人公が屋根裏から見つける日本画の題名であり、同時にモーツァルトのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』で騎士団長が殺される場面を指しています。
絵はその場面を、飛鳥時代の装束をまとった人物たちに置き換えて描いたものとして登場します。
まとめ|騎士団長殺しは村上春樹のモチーフが一堂に会する2部構成の長編
『騎士団長殺し』は、村上春樹が2017年に新潮社から第1部・第2部同時刊行した長編小説です。
妻に去られた肖像画家、山荘の屋根裏に眠っていた一枚の絵、雑木林の穴、そして顕れる「騎士団長」——村上作品でおなじみのモチーフが、「イデア」「メタファー」という言葉とともに一堂に会します。
答えを提示しない作りなので、読み解きの余白そのものを楽しめる読者に向いた一冊です。
文庫で読むなら新潮文庫の全4巻を第1部〔上〕から順に。
読み終えたら、『1Q84』や『海辺のカフカ』へ進むと、村上春樹が繰り返し描いてきた「二重の世界」の輪郭がさらにはっきり見えてきます。
- 新潮文庫版は全4巻・第1部〔上〕から順に読むだけ
- 単行本2冊・COMPLETE BOX・電子書籍もあり
- 『1Q84』『海辺のカフカ』もまとめてチェック可
ヨムマップは小説情報を実体験ベースで継続更新しています
騎士団長殺し・関連作品の読書ガイド
出典・参考情報
- 新潮社『騎士団長殺し―第1部 顕れるイデア編―』製品情報(単行本2017年2月24日刊)
- 新潮社『騎士団長殺し―第2部 遷ろうメタファー編―』製品情報(単行本2017年2月24日刊)
- 新潮社『騎士団長殺し―第1部 顕れるイデア編〔上〕―』新潮文庫 製品情報(2019年2月28日刊・ISBN 978-4-10-100171-5)
- 新潮社『騎士団長殺し―第2部 遷ろうメタファー編〔下〕―』新潮文庫 製品情報(2019年3月28日刊)
- openBD 書誌情報(ISBN 9784101001715/9784101001722/9784101001739/9784101001746)
- Wikipedia「騎士団長殺し」項目(最終確認: 2026年8月2日)




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