芥川龍之介の『羅生門』を読むべき理由を、平安京の荒廃を映す圧倒的な舞台描写・善悪のあいだで揺れる下人の心理・エゴイズムを鋭くえぐる主題という3観点で完全解説。
羅生門の楼上で死人の髪を抜く老婆と出会った下人は、何を選ぶのか——教科書でおなじみの名短編を、あらすじと読みどころから紹介します。
最終更新日: 2026年7月27日
※本ページはアフィリエイトリンクを含みます。
- 人間のエゴイズムを描く芥川龍之介の名短編
- 「羅生門」「鼻」ほかを収めた新潮文庫の定番
- 新潮文庫・電子書籍・中古版すべてチェック可能
羅生門とは|芥川龍之介がエゴイズムを描いた名短編
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 著者 | 芥川龍之介 |
| ジャンル | 短編小説/古典文学 |
| 初出 | 1915年(雑誌『帝国文学』) |
| 定番文庫 | 新潮文庫『羅生門・鼻』 |
| 文庫ISBN | 978-4-10-102501-8 |
| 原話 | 『今昔物語集』の説話 |
| 主題 | 人間のエゴイズム/善悪の境界 |
| 関連作 | 芥川賞 歴代受賞作一覧/文学・純文学のおすすめ作品ガイド |
『羅生門』は、芥川龍之介が1915年に発表した、人間のエゴイズムを鋭く描く名短編です。
舞台は、災害や飢饉が続いて荒廃した平安京末期。主家を追われ行き場を失った下人が、朽ちた羅生門の楼上で雨宿りをします。
そこで彼が目にしたのは、死人の髪を抜く一人の老婆だった——短いながらも、善悪の境界で揺れる人間の心理を深くえぐる、芥川文学の出発点というべき一作です。なお定番の新潮文庫版は表題作「羅生門」「鼻」ほかを収めた短編集です。
羅生門のあらすじ|荒廃した都で下人が迫られる選択

物語の舞台は、天災や飢饉が続き、荒れ果てた平安京の羅生門です。
行き場を失った下人
主家を解雇され、明日の生活のあてもない一人の下人が、雨の降る羅生門の下で途方に暮れています。
「盗人になるより仕方がない」と思いながらも、その悪に踏み切る勇気が出ない——彼は善と悪のあいだで揺れています。
やがて彼は、門の楼上に上がり、そこである光景を目にします。
死人の髪を抜く老婆との対峙
楼上には、打ち捨てられた死体の山があり、その中で一人の老婆が女の死人の髪を抜いていました。
はじめは悪への嫌悪から老婆を責める下人ですが、「生きるためには仕方がない」という老婆の論理を聞くうちに、彼の心に変化が生まれます。
下人が最後にどんな行動を選ぶのか——その一点に、人間のエゴイズムをめぐる主題が凝縮されています。
※結末には触れていません。
羅生門の3つの読みどころ

1. 平安京の荒廃を映す圧倒的な舞台描写
本作の魅力は、荒れ果てた羅生門と、雨に濡れる暗い都の情景描写にあります。
わずか数ページのうちに、退廃と不安に満ちた世界が鮮やかに立ち上がります。
簡潔でありながら緊張感に満ちた芥川の文章は、短編小説の一つの理想形といえます。
2. 善悪のあいだで揺れる下人の心理
「盗みは悪だ」と分かっていながら、生きるために悪へ傾いていく下人の心の揺れが本作の核心です。
極限状況に置かれたとき、人間の倫理はどこまで持ちこたえられるのか——読者は下人とともにその問いに向き合わされます。
善悪が簡単には割り切れない人間の姿を、芥川は冷徹に描き出します。
3. エゴイズムを鋭くえぐる主題
「生きるためなら、どんな悪も許されるのか」というエゴイズムの問いは、時代を超えて読者に突き刺さります。
答えを押しつけず、読者に考えさせる余白を残すのが芥川文学の特徴です。
短いのに何度も読み返したくなる、深い余韻が本作にはあります。
羅生門と黒澤明の映画の関係

黒澤明監督の名作映画『羅生門』(1950年)は、実は本作『羅生門』そのものの映画化ではありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 映画のストーリーの原作 | 芥川『藪の中』 |
| 映画が借りたもの | 『羅生門』の題名と冒頭の門の設定 |
| 映画『羅生門』の受賞 | ヴェネツィア国際映画祭グランプリ |
映画『羅生門』の物語の本体は、一つの事件を関係者が食い違って語る芥川龍之介の別作品『藪の中』です。
短編『羅生門』からは、題名と羅生門という舞台設定を借りているにとどまります。混同されやすい点なので、あわせて『藪の中』を読むと理解が深まります。
羅生門と芥川龍之介の代表作
芥川龍之介は、短編小説の名手として知られる、大正期を代表する作家です。
| 関連作品 | 概要 | 関係性 |
|---|---|---|
| 鼻 | 長い鼻に悩む僧の物語 | 『羅生門・鼻』に併録 |
| 藪の中 | 食い違う証言で語られる事件 | 映画『羅生門』の原作 |
| 蜘蛛の糸 | 地獄と極楽をめぐる説話 | 児童にも親しまれる代表作 |
芥川の名を冠した文学賞が「芥川賞(芥川龍之介賞)」で、友人の菊池寛の発案により1935年に創設されました(芥川本人の受賞ではなく、没後の記念賞です)。
新潮文庫『羅生門・鼻』には「鼻」も併録されているので、あわせて楽しめます。
羅生門の読了時間と難易度
- 読了時間目安: 「羅生門」単体は約20〜30分(短編)/文庫全体で約3〜4時間
- 難易度: ★★☆☆☆(短く読みやすいが、主題は深い)
- おすすめタイプ: 古典文学の入門を探している人/短編で名作を味わいたい人/人間心理を考えさせる物語が好きな人
「羅生門」自体は数十分で読める短編なので、古典文学の入り口に最適です。
併録の「鼻」など、芥川短編の名品もまとめて味わえるのが文庫版の魅力です。
羅生門に関するよくある質問
Q. 黒澤明の映画『羅生門』の原作ですか?
A. 物語の原作は別作品『藪の中』です。
映画は題名と門の設定を『羅生門』から借りていますが、ストーリーの本体は芥川龍之介の『藪の中』です。
Q. とても短いと聞きますが、単体で売っていますか?
A. 短編のため、通常は短編集に収録されています。
定番は新潮文庫『羅生門・鼻』で、表題作のほか「鼻」など複数の短編が収められています。
Q. 芥川龍之介は芥川賞を受賞したのですか?
A. いいえ、受賞していません。
芥川賞は芥川の死後、その名を記念して1935年に創設された新人賞で、本人の受賞ではありません。
まとめ|羅生門は芥川龍之介がエゴイズムを描いた名短編
『羅生門』は、芥川龍之介が荒廃した平安京を舞台に、人間のエゴイズムを鋭く描いた名短編。
行き場を失った下人が、死人の髪を抜く老婆と対峙し、善悪のあいだで揺れる——短いながらも、読むたびに問いが深まる不朽の一作です。
古典文学の入門を探している方・短編で名作を味わいたい方・人間心理を考えさせる物語が好きな方におすすめできる作品。
新潮文庫『羅生門・鼻』で手に取って、芥川賞 歴代受賞作一覧や文学・純文学のおすすめ作品ガイドともあわせて、芥川龍之介の世界を味わってみてください。
- 新潮文庫『羅生門・鼻』がおすすめ・電子書籍版あり
- 人間のエゴイズムを描く不朽の名短編
- 「鼻」など芥川短編もまとめてチェック可
ヨムマップは小説情報を実体験ベースで継続更新しています
羅生門・関連作品の読書ガイド
出典・参考情報
- 新潮社『羅生門・鼻』公式書籍情報(新潮文庫 ISBN 978-4-10-102501-8)
- 版元ドットコム/各書店データベース
- Wikipedia「羅生門 (小説)」「羅生門 (1950年の映画)」「芥川龍之介賞」項目(最終確認: 2026年7月27日)




コメント