『ゾンビ回収婦』は、小砂川チトが書いた純文学の中編で、AI〈やつら〉に侵食された世界で夫とともに職を失った「わたし」が、ホテルでただひとりの掃除婦として殺されたゾンビの骸を拾い集める物語です。2026年7月に第175回芥川賞を受賞しました。著者にとっては3度目の候補でつかんだ受賞です。この記事では、あらすじ・読みどころ・第175回の候補作一覧まで紹介します。
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- 第175回芥川賞受賞作(2026年7月15日発表)
- 3度目の候補での受賞。著者の3作目にあたる
- 2026年7月9日刊行・160ページと読み切りやすい中編
ゾンビ回収婦とは|3度目の候補でつかんだ第175回芥川賞受賞作
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 著者 | 小砂川チト(1990年生まれ・岩手県盛岡市出身) |
| 刊行 | 講談社・2026年7月9日・160ページ・定価1,980円(ISBN 978-4-06-544112-1) |
| 初出 | 『群像』2026年5月号 |
| 受賞 | 第175回芥川龍之介賞(2026年7月15日発表) |
| 候補歴 | 第167回『家庭用安心坑夫』/第170回『猿の戴冠式』/第175回『ゾンビ回収婦』(受賞) |
出典:講談社『ゾンビ回収婦』製品詳細、国立国会図書館サーチ、Wikipedia『小砂川チト』(2026年9月13日時点)
デビューからずっと芥川賞の候補に挙がり続けてきた作家の、3度目の受賞です。2022年のデビュー作『家庭用安心坑夫』で第167回、2024年の『猿の戴冠式』で第170回の候補となり、本作で受けました。160ページの中編なので、芥川賞受賞作としても手に取りやすい分量です。
ゾンビ回収婦のあらすじ|世界を美しく保つための、たったひとりの掃除婦

AI〈やつら〉に職を奪われる
物語の世界は、AI〈やつら〉に侵食されています。
「わたし」は夫とともに職を失いました。
もうひとつの現実が立ち顕れる
職を失った「わたし」の前に、もうひとつの現実がたち顕れます。
そこで得た仕事が、あるホテルの掃除婦でした。
殺されたゾンビの骸を拾い集める
わたしはこのホテルの、たったひとりの掃除婦。
仕事は、殺されたゾンビの骸を拾い集めて、世界を美しく保つことです。
感謝されず、褒められもしない
三十余年、良い子で大人になった「わたし」は、これまでと変わらず懸命に、ひたむきに役割をこなしていきます。
けれど、感謝されず、褒められもしない。
それこそまるで「 」みたいに?——この空白が、作品の中心にあります。
ゾンビ回収婦の3つの読みどころ

1. ゾンビが「倒す相手」ではないこと
ゾンビものでありながら、主人公はゾンビと戦いません。すでに殺されたあとの骸を、黙々と片付けるだけです。ホラーでもアクションでもなく、後始末をする人の話として書かれている点が本作を特異にしています。
2. 空欄に何を入れるかを読者に委ねる構造
「それこそまるで『 』みたいに?」という空白は、作中で埋められません。感謝も評価もされない労働を何にたとえるかを、読者が自分で埋めることになります。一気読みできる分量でありながら、読後に長く残るのはこの一点です。
3. AIに職を奪われた世界の描き方
〈やつら〉という呼び方が示すとおり、AIは説明される対象ではなくすでに前提として世界を侵食しています。技術の是非を論じる小説ではなく、その後に残された人間が何をして日を過ごすかだけが書かれます。
ゾンビ回収婦の版と入手方法

| 版 | 出版社 | 刊行 |
|---|---|---|
| 単行本 | 講談社 | 2026年7月9日・160ページ・1,980円 |
2026年9月時点で文庫版は出ていません。単行本のみです。
ゾンビ回収婦と第175回芥川賞の候補作
| 著者 | 作品 | 初出 |
|---|---|---|
| 小砂川チト | ゾンビ回収婦(受賞) | 群像 2026年5月号 |
| 鈴木涼美 | 悪い血 | 文學界 2026年6月号 |
| 仁科斂 | 丹心 | 新潮 2026年4月号 |
| 村司侑 | ソリティアおじさんがいた頃 | 文學界 2026年5月号 |
| 八木詠美 | アンチ・グッドモーニング | 文藝 2026年春季号 |
候補は5作で、すべて文芸誌に発表された作品です。同じ第175回の直木賞は、朝倉かすみ『けんぐゎい』が受賞しました。
ゾンビ回収婦の読了時間と難易度
160ページの中編で、一般的な読書速度で2〜3時間が目安です。芥川賞受賞作としては短い部類に入ります。
設定を飲み込むまでが山場です。AI〈やつら〉やゾンビの存在について、作中で丁寧な説明はされません。「そういう世界である」と受け入れて読み進めると、中盤以降は主人公の仕事の描写が続くため速度が上がります。純文学に不慣れでも、奇想天外な入口から入れる作りです。
ゾンビ回収婦に関するよくある質問
ゾンビ回収婦はどんな賞を受賞しましたか
第175回芥川龍之介賞を受賞しています。2026年7月15日の発表で、著者にとって3度目の候補での受賞です。
ホラー小説ですか
ホラーではありません。主人公はゾンビと戦わず、殺されたあとの骸を片付ける仕事をします。分類は純文学です。
文庫版は出ていますか
2026年9月時点では単行本のみです。過去2作は2026年6月に合本の講談社文庫『家庭用安心坑夫/猿の戴冠式』になっています。
先に読んでおくべき作品はありますか
ありません。単独で完結します。作風に慣れたい場合はデビュー作の『家庭用安心坑夫』からでも構いません。
小砂川チトの他の作品はどれを読むべきですか
デビュー作『家庭用安心坑夫』と、第170回芥川賞候補の『猿の戴冠式』の2作です。作品一覧は小砂川チトのおすすめ小説3選にまとめています。
まとめ|誰にも感謝されない後始末を、ひたむきに続ける
- 『ゾンビ回収婦』は、AIに職を奪われた世界で、殺されたゾンビの骸を拾い集める掃除婦を書いた中編
- 第175回芥川賞受賞作。著者は3度目の候補での受賞
- ゾンビと戦わない。感謝されない労働を何にたとえるかの空欄が中心にある
- 160ページ・2026年7月9日刊行。文庫版は2026年9月時点で未刊
読み終えたあとに残るのは、埋められないまま渡された空欄のほうです。
長編や積んだままの本ほど、聴くと最後までたどり着けます。
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