『虞姫寂静』(ぐきじゃくじょう)は、万城目学の短編に西淑(ニシシュク)の装画・挿絵を添えたアートブックで、2026年11月19日(木)に実業之日本社から出ます。四六判96ページ・2,200円(税込)。
先に、検索して来た方がつまずきやすい点を3つ書きます。ここが一番大事です。
ひとつ目。書き下ろしの新作ではありません。 版元自身が「至高の傑作短編」と書いています。同じ題名の作品は、2014年の短編集『悟浄出立』(新潮社)に収録された5篇のうちの1篇です。
ふたつ目。文庫なら同じ作品を含む5篇が539円で読めます。 新潮文庫『悟浄出立』は240ページ・539円(税込)で、「虞姫寂静」はその中の1篇です。本作は、その1篇だけを96ページ・2,200円にした本です。1ページあたりの値段は約10倍になります。
みっつ目。版元が新潮社ではありません。 小説としての『悟浄出立』は新潮社、本作は実業之日本社です。版元が違うので、書店では別の棚に並びます。
※本ページはアフィリエイトリンクを含みます。
※本記事は発売前に公表された情報にもとづいています。
- 2026年11月19日・実業之日本社・四六判96ページ・2,200円(税込)
- 西淑の装画・挿絵つき。版元の表記は「アートブック」
- 書き下ろしではなく「至高の傑作短編」。2014年『悟浄出立』の1篇
虞姫寂静とは|96ページのアートブック

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 著 | 万城目学(マキメ マナブ) |
| 絵 | 西淑(ニシシュク)/装画・挿絵 |
| 版元 | 実業之日本社 |
| 発売日 | 2026年11月19日(木) |
| 判型 | 四六判(188mm×128mm) |
| ページ | 96ページ |
| 価格 | 2,200円(税込・本体2,000円) |
| ISBN | 978-4-408-53931-7 |
| 版元の分類 | アートブック |
出典:実業之日本社 書籍詳細、国立国会図書館サーチ(2026年10月12日時点)
版元の紹介文は一文だけ
直木賞作家・万城目学が圧倒的な筆致で歴史の異聞を描き出した至高の傑作短編を西淑の装画・挿絵とともに味わうアートブック。
出典:実業之日本社 書籍詳細(2026年10月12日時点)
この一文に、重要な語が3つ入っています。
| 語 | 読み取れること |
|---|---|
| 「傑作短編」 | 既発表の短編(書き下ろしの新作ではない) |
| 「装画・挿絵とともに味わう」 | 絵が主役の半分。文章だけの本ではない |
| 「アートブック」 | 版元自身が小説ではなくアートブックと呼んでいる |
版元は「どの本の短編か」を書いていない
紹介文は「至高の傑作短編」で止まり、収録元の書名が出てきません。
→ 『悟浄出立』を持っている読者が、重複を確認できない書き方になっています。本記事がこの点を先に書いたのは、そのためです。
国立国会図書館で『虞姫寂静』を引くと
| 検索結果 | 内容 |
|---|---|
| 2026年11月19日・実業之日本社 | 本作(96ページ・188×128mm・万城目学 著/西淑 イラスト) |
| 2014年/2017年・新潮社『悟浄出立』 | 「虞姫寂静」を収録する短編集 |
| 2024年/2025年の研究論文2件 | 「悟浄出立」「趙雲西航」「虞姫寂静」を扱った論考 |
出典:国立国会図書館サーチ(2026年10月12日時点)
→ 『虞姫寂静』という題の単行本は、2026年の本作が初めてです。それ以前は『悟浄出立』の中の1篇としてしか存在しません。
虞姫寂静の元になった短編集|『悟浄出立』の5篇

『悟浄出立』の収録作
新潮社の書籍詳細に、5篇が並んでいます。
| 題名 | |
|---|---|
| 1 | 悟浄出立 |
| 2 | 趙雲西航 |
| 3 | 虞姫寂静 ← 本作 |
| 4 | 法家孤憤 |
| 5 | 父司馬遷 |
出典:新潮社 書籍詳細『悟浄出立』(2026年10月12日時点)
版元の紹介文は「おまえを主人公にしてやろうか――! 人生でもっとも強烈な”一瞬”を照らす五編。」です。 5篇すべてが中国の古典を題材にしています。
出典:新潮社 書籍詳細『悟浄出立』(2026年10月12日時点)
『悟浄出立』の版を並べる
| 刊行 | 版 | ページ | 価格 |
|---|---|---|---|
| 2014年 | 新潮社 単行本 | 206ページ | 本体1,300円 |
| 2016年12月24日 | 新潮文庫(ま-48-1) | 240ページ(版元表記) | 539円(税込) |
出典:新潮社 書籍詳細『悟浄出立』、国立国会図書館サーチ(2026年10月12日時点)
なお文庫のページ数は、新潮社公式が240ページ、国立国会図書館の書誌が229ページで11ページ食い違います。本記事は版元の240ページを主として扱います。
1ページあたりの値段が約10倍になる
| 新潮文庫『悟浄出立』 | 本作『虞姫寂静』 | |
|---|---|---|
| 収録 | 5篇 | 1篇 |
| ページ | 240ページ | 96ページ |
| 価格(税込) | 539円 | 2,200円 |
| 1ページあたり | 約2.25円 | 約22.92円 |
| 絵 | — | 西淑の装画・挿絵 |
→ 約4.1倍の値段で、収録は5分の1です。1ページ単価では約10.2倍。 その差が「西淑の装画・挿絵」と造本にあたります。
ただし、絵の点数は2026年10月時点で公表されていません。 96ページのうち絵が何ページを占めるのかも未公表です。
題材は項羽と虞姫
虞姫は、秦末から前漢初めの武将・項羽に仕えた女性で、「虞美人」の名でも知られます。 『史記』の項羽本紀に、垓下で漢軍に囲まれた項羽が虞姫を前に歌った場面が記されています。
『悟浄出立』の他の4篇も同じ圏域です。「趙雲西航」は『三国志』の趙雲、「父司馬遷」は『史記』を書いた司馬遷、「悟浄出立」は『西遊記』の沙悟浄。版元の紹介文にある「歴史の異聞」という語は、正史をそのまま語るのではなく、脇にいた人物の側から書くという同書全体の作りを指しています。書名が5篇とも漢字4字であることも、この連なりを示しています。
なお「虞姫寂静」は研究の対象にもなってきた1篇です。
| 論文 | 扱う3篇 |
|---|---|
| 箕野聡子「万城目学『悟浄出立』考――「悟浄出立」「趙雲西航」「虞姫寂静」にみる故郷喪失者たちの物語――」(2024年、2025年に雑誌掲載) | 悟浄出立・趙雲西航・虞姫寂静 |
出典:国立国会図書館サーチ(2026年10月12日時点)
→ 単独で本になる作品が選ばれた背景は版元から説明されていませんが、論じられてきた3篇のひとつではあります。
虞姫寂静の位置づけ|万城目学の2026年

2026年の万城目学
| 刊行 | 書名 | 版元 | ページ |
|---|---|---|---|
| 2026年4〜5月 | R3(Rakugo:3 stories)(柳亭小痴楽・真島昌利との3人の本) | — | 127ページ |
| 2026年 | 鴨川ホルモー(新版) | — | 298ページ |
| 2026年 | 八月の御所グラウンド(文庫) | — | 223ページ |
| 2026年6月24日 | ホルモー燦燦(完結編) | KADOKAWA | 317ページ |
| 2026年11月19日 | 虞姫寂静(本作) | 実業之日本社 | 96ページ |
出典:国立国会図書館サーチ(2026年10月12日時点)
→ 2026年に動きが多い年で、本作は96ページで最も薄い1冊です。
「直木賞作家」という肩書き
版元は冒頭に「直木賞作家」と置いています。 万城目学は『八月の御所グラウンド』で直木賞を受けました。→ 2014年に出た短編が、著者の受賞後に単独で本になるという順番です。
著者本人は「絵物語」と呼んでいる
著者のX(旧Twitter)での告知では、本作を自身初の絵物語・イラスト入りの本として紹介しています。版元の表記は「アートブック」で、どちらも「文章だけの本ではない」ことを示しています。
当サイトの万城目学レビューとの関係
| 記事 | 内容 |
|---|---|
| 鴨川ホルモー | 京大生が「オニ」を率いて戦う京都青春ファンタジー |
| 鹿男あをによし | 奈良の女子高に赴任した「おれ」への救国指令 |
どちらも現代日本が舞台のファンタジーです。→ 本作(中国古典が題材)は、当サイトで初めての「万城目学の歴史もの」になります。
虞姫寂静の3つの読みどころ

1. 96ページで完結するので一度に読み切れる
1篇だけの本です。『悟浄出立』の他の4篇を読まなくても独立して読めます。 短編1つなので、1時間以内で読み終わる分量です。
2. 西淑の絵がどれだけ入るか
版元が「装画・挿絵とともに味わう」と書き、分類を「アートブック」にしています。 → 絵のほうを目的に買う本としても成立するという作りです。点数と配置は未公表なので、ここは発売後に確認するしかありません。
3. すでに文庫で読んだ人が買う理由があるか
作品自体は539円の新潮文庫で読めます。 → 本作の2,200円は「同じ文章を、絵と造本で読み直す」ための値段です。初めて読む方には、5篇入りの文庫のほうが分量あたりは圧倒的に有利です。
虞姫寂静に関するよくある質問
虞姫寂静はいつ発売ですか
2026年11月19日(木)です。実業之日本社から四六判96ページ・2,200円(税込・本体2,000円)で出ます。
読み方は何ですか
「ぐきじゃくじょう」です(国立国会図書館の書誌の読みは「グキジャクジョウ」)。
新作の書き下ろしですか
書き下ろしではありません。 版元は「至高の傑作短編」と書いています。同題の作品は2014年の短編集『悟浄出立』(新潮社)に収録された5篇のうちの1篇です。
『悟浄出立』を持っていたら買う必要はありますか
文章だけが目的なら不要です。 「虞姫寂静」は新潮文庫『悟浄出立』(240ページ・539円税込)に入っています。 本作の価値は西淑の装画・挿絵と造本にあり、版元は分類を「アートブック」としています。ただし絵の点数は未公表です。
『悟浄出立』には何が入っていますか
5篇です。 「悟浄出立」「趙雲西航」「虞姫寂静」「法家孤憤」「父司馬遷」。すべて中国の古典を題材にした作品です。
絵は誰が描いていますか
西淑(ニシシュク)です。装画と挿絵を担当します。
版元はなぜ新潮社ではないのですか
理由は公表されていません。 小説としての『悟浄出立』は新潮社(単行本2014年・新潮文庫2016年)、本作は実業之日本社です。書店では別の棚に並びます。
96ページで2,200円は高いですか
1ページあたり約22.9円です。新潮文庫『悟浄出立』は240ページ・539円=約2.25円なので、1ページ単価で約10.2倍になります。絵と造本に払う本と考える必要があります。
虞姫とは誰ですか
項羽に仕えた女性で、「虞美人」の名でも知られます。 『史記』項羽本紀に、垓下で漢軍に包囲された項羽が虞姫を前に歌う場面が記されています。
中国史を知らないと読めませんか
『悟浄出立』の5篇は、脇にいた人物の視点から書かれています。 版元の表現は「歴史の異聞」です。前提知識がなくても読める作りですが、項羽と虞姫の関係を知っていると背景が立ちます。
万城目学は初めてです。これから読んでいいですか
96ページの1篇なので入口にはなりますが、代表作は現代日本が舞台のファンタジーです。『鴨川ホルモー』、『鹿男あをによし』、直木賞受賞作『八月の御所グラウンド』が入口です。全体像は万城目学の新刊・新作ガイドとおすすめランキングTOP10にまとめています。
まとめ|12年前の1篇が、10倍のページ単価で1冊になる
- 『虞姫寂静』は2026年11月19日(木)・実業之日本社・四六判96ページ・2,200円(税込・本体2,000円)
- ★書き下ろしの新作ではない。 版元自身が「至高の傑作短編」と書く。同題の作品は2014年『悟浄出立』(新潮社)収録の5篇のうちの1篇
- ★版元は収録元の書名を書いていない=『悟浄出立』を持っている読者が重複を確認できない
- ★同じ作品を含む5篇が新潮文庫で240ページ・539円(税込)。本作は1篇だけで96ページ・2,200円=1ページ単価 約2.25円→約22.92円(約10.2倍)、値段4.1倍で収録は5分の1
- ★版元が新潮社から実業之日本社に変わっている(小説としての『悟浄出立』は新潮社)
- ★版元の分類は「アートブック」。西淑(ニシシュク)の装画・挿絵つきで、著者本人も自身初の絵物語として告知している。ただし絵の点数と配置は未公表
- ★『虞姫寂静』という題の単行本は本作が初めて。国立国会図書館で引くと、それ以前は『悟浄出立』の中の1篇と研究論文2件しか出ない
- 『悟浄出立』の5篇は「悟浄出立」「趙雲西航」「虞姫寂静」「法家孤憤」「父司馬遷」で、すべて中国古典が題材
- 新潮文庫のページ数は版元240ページ/国立国会図書館229ページで11ページ食い違う
- 虞姫は項羽に仕えた女性(「虞美人」)。『史記』項羽本紀の垓下の場面で知られる
- 2026年の万城目学は刊行が多い年で、『ホルモー燦燦』(6月24日・KADOKAWA・317ページ)などがある。本作は96ページで最も薄い
- 当サイトの既刊レビューは『鴨川ホルモー』と『鹿男あをによし』でどちらも現代日本のファンタジー。本作は初の「歴史もの」
初めて読むなら539円の文庫が5篇入り。 2,200円の96ページは、同じ文章を絵と造本で読み直すための本です。




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