『鼓動』は、『ロスト・ケア』『絶叫』で知られる葉真中顕の長編で、2026年10月8日に光文社文庫から出ます。1,012円(税込)。2024年3月21日に出た単行本の文庫化です。ホームレスの老女が殺されて燃やされるという事件から始まり、犯人は18年引きこもっていた男、事件を追う女性刑事は殺された老女に自分の未来を重ねます。本作は第37回山本周五郎賞の候補作で、読売新聞の書評は宮部みゆきが書きました。この記事では、あらすじと読みどころを一次資料で整理します。
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※本記事は発売前に公表された情報にもとづいています。
鼓動とは|単行本から2年7か月での文庫化
| 項目 | 文庫版(本作) | 単行本 |
|---|---|---|
| 版元・レーベル | 光文社文庫 | 光文社 |
| 発売日 | 2026年10月8日 | 2024年3月21日 |
| ページ | — | 323ページ |
| 価格 | 1,012円(税込・本体920円) | 1,870円(税込・本体1,700円) |
| ISBN | 978-4-334-11167-0 | 978-4-334-10257-9 |
| Cコード | C0193(一般・文庫・日本文学) | C0093(一般・単行本・日本文学) |
出典:版元ドットコム(光文社登録データ・文庫)、版元ドットコム(単行本)、国立国会図書館サーチ(2026年10月3日時点)
単行本から文庫までは約2年7か月です。価格は1,870円→1,012円になります。
鼓動のあらすじ|殺された老女と、18年引きこもった男

ホームレスの老女が殺され、燃やされる
事件はここから始まります。ホームレスの老女が殺され、燃やされました。
犯人は18年引きこもっていた男で、父親も殺したと自供する
逮捕されたのは草鹿秀郎(くさか ひでお)。もう18年も引きこもった生活を送っていました。さらに彼は、父親も刺し殺したと自供します。
「長年引きこもった果てに残酷な方法で二人を殺した男の人生に、いったい何があったのか」
版元はこの問いを本作の軸に置いています。
刑事・奥貫綾乃は、殺された老女に自分の未来を重ねる
事件を追うのは刑事の奥貫綾乃(おくぬき あやの)。彼女は殺された老女に自分の未来を重ねます。
「私もこんなふうに死ぬのかもしれない――。」
刑事と犯人、二つの孤独な魂が交錯します。版元は本作を「困難な時代に生の意味を問う、感動の社会派ミステリー」と紹介しています。
出典:版元ドットコム(光文社登録データ)の内容紹介(2026年10月3日時点)
鼓動の3つの読みどころ

1. 第37回山本周五郎賞の候補作である
本作は第37回山本周五郎賞の候補に挙がりました。
| 区分 | 作品 | 著者 |
|---|---|---|
| 受賞 | 地雷グリコ | 青崎有吾 |
| 候補 | 禍 | 小田雅久仁 |
| 候補 | こまどりたちが歌うなら | 寺地はるな |
| 候補 | 鼓動 | 葉真中顕 |
出典:新潮社 山本周五郎賞 第37回(2026年10月3日時点)
選考委員は伊坂幸太郎・江國香織・小川哲・今野敏・三浦しをんの5名でした。
山本周五郎賞は「物語性に富んだ優れた小説作品」に贈られる賞で、同じ回の候補に『禍』(ホラー短編集)と『地雷グリコ』(ゲーム対決もの)が並んでいることからも、選考の幅の広さが分かります。その中で本作は社会派の長編として残った作品です。
2. 読売新聞の書評を宮部みゆきが書いている
本作の単行本には、全国紙2紙に書評が載りました。
| 掲載日 | 媒体 | 評者 |
|---|---|---|
| 2024年5月26日 | 読売新聞 朝刊 | 宮部みゆき(作家) |
| 2024年5月19日 | 産經新聞 朝刊 | 細谷正充(文芸評論家) |
出典:版元ドットコム(光文社登録データ)の書評掲載情報(2026年10月3日時点)
現役の作家が全国紙で同時代の長編を評するのは、作品にとって大きな出来事です。宮部みゆき自身が社会の周縁にいる人を描いてきた作家であることを踏まえると、評者の人選が本作の主題と噛み合っているのが分かります。
3. 「加害者の人生をどこまで遡るか」という葉真中顕の一貫した問い
葉真中顕はデビュー作から、事件の背景にある制度と人生を遡る書き手です。
| 作品 | 版元 | 刊行 | 題材 |
|---|---|---|---|
| ロスト・ケア(デビュー作) | 光文社 | 2013年2月 | 介護 |
| 絶叫 | 光文社 | 2014年10月 | 孤独死した女性の人生 |
| コクーン | 光文社 | 2016年10月 | カルト |
| 凍てつく太陽 | 幻冬舎 | 2018年8月 | 戦時下の北海道 |
| ブルー | 光文社 | 2019年4月 | 外国人労働 |
| 灼熱 | 新潮社 | 2021年9月 | 日系ブラジル移民 |
| 鼓動 | 光文社 | 2024年3月 | 長期の引きこもり・ホームレス |
| 家族 | 文藝春秋 | 2025年10月 | 家族 |
出典:国立国会図書館サーチ(2026年10月3日時点)
デビュー作『ロスト・ケア』が介護、『絶叫』が孤独死でした。本作は「18年の引きこもり」と「路上で死ぬ老女」を一つの事件でつないでいます。
「私もこんなふうに死ぬのかもしれない」という刑事の独白は、加害者と被害者のどちらにも自分が重なりうるという構造です。犯人の人生を遡る話と、刑事が自分の行き先を見る話が同時に走るのが本作の形です。
偶然ながら、同じ週に「引きこもり」を扱う文庫が2冊出る

本作が出る2026年10月8日の翌日(10月9日)に、中山七里の『ヒポクラテスの悲嘆』文庫版が祥伝社文庫から出ます。
| 作品 | 版元 | 発売日 | 引きこもりの扱い |
|---|---|---|---|
| 鼓動 | 光文社文庫 | 2026年10月8日 | 犯人が18年の引きこもり。殺人の背景として |
| ヒポクラテスの悲嘆 | 祥伝社文庫 | 2026年10月9日 | 被害者が20年以上の引きこもり。餓死の背景として |
出典:版元ドットコム(光文社)、版元ドットコム(祥伝社)(2026年10月3日時点)
同じ社会問題を、一方は加害者側、もう一方は被害者側から扱っています。版元も作家も無関係ですが、2日違いで棚に並ぶので、合わせて読むと主題の両面が見えます。
鼓動に関するよくある質問
単行本と文庫で中身は違いますか
本編は同じ作品です。ページ数は単行本が323ページで、文庫版のページ数は2026年10月3日時点で未公表です。解説が新規収録されるかも公表されていません。
単行本を持っています。文庫も買う必要はありますか
本編が同じなので、買い直す必要はありません。文庫を選ぶ理由になるのは1,012円という価格と、新規収録の有無が判明した場合です。
山本周五郎賞を受賞したのですか
いいえ。候補作です。第37回の受賞作は青崎有吾『地雷グリコ』でした。他の候補は小田雅久仁『禍』、寺地はるな『こまどりたちが歌うなら』です。
シリーズものですか
いいえ。単独の長編です。版元の書誌情報にシリーズ表記はなく、前提となる既刊はありません。
警察小説ですか
警察小説の要素はありますが、版元の呼び方は「社会派ミステリー」です。刑事・奥貫綾乃が事件を追う筋がある一方、犯人の人生を遡る部分が作品の中心です。捜査の手続きを楽しむ本ではなく、背景を掘る本として読むのが向いています。
実際の事件が元になっていますか
版元の内容紹介に、実在の事件への言及はありません。フィクションです。
葉真中顕を初めて読みます。どれから読むべきですか
本作から入れます。デビュー作から読みたいなら『ロスト・ケア』(2013年2月・光文社/介護を扱った作品)が出発点です。本作に主題が近いのは『絶叫』(2014年10月・光文社/孤独死した女性の人生を遡る長編)です。
読了時間はどれくらいですか
単行本で323ページなので、通しで5〜6時間が目安です。文庫版のページ数は未公表です。
まとめ|犯人の18年と、刑事の「私もこうなるのか」
- 『鼓動』文庫版は2026年10月8日・光文社文庫・1,012円(税込)
- 2024年3月21日の単行本(323ページ・1,870円)の文庫化。約2年7か月後
- ホームレスの老女が殺され燃やされる事件から始まる
- 犯人の草鹿秀郎は18年引きこもり、父親も刺し殺したと自供する
- 刑事の奥貫綾乃は、殺された老女に自分の未来を重ねる
- 第37回山本周五郎賞候補作(受賞は青崎有吾『地雷グリコ』)
- 読売新聞朝刊の書評は宮部みゆき(2024年5月26日)
犯人の人生を18年遡る話と、刑事が自分の行き先を見る話が、同じ事件で重なります。版元の言う「二つの孤独な魂が交錯する」がそのまま作品の形です。




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