『蒼羽さん事件』は、『スワン』『爆弾』で知られる呉勝浩の新作長編で、2026年10月21日に中央公論新社から出ます。2,310円(税込)・四六判368ページ。ひとりの女子高生が失踪し、腐乱死体となって発見される事件から始まりますが、最有力容疑者のアリバイが成立して捜査は暗礁に乗り上げます。物語が動くのはそれから約十年後——あるノンフィクション作家が、ひょんなことから被害者のアカウントらしきものを知るところからです。手がかりは事件前日の「チョウチョのところ19」という意味深な投稿ひとつ。版元が掲げるキャッチは「この本、出せますか?」です。この記事では、あらすじと読みどころを一次資料で整理します。
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※本記事は発売前に公表された情報にもとづいています。
- 2026年10月21日・中央公論新社・2,310円(税込)・368ページ
- 未解決事件を約十年後に書こうとする作家の物語
- 著者は江戸川乱歩賞・大藪春彦賞・吉川英治文学新人賞受賞
蒼羽さん事件とは|中央公論新社から出る四六判の新作

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書名 | 蒼羽さん事件 |
| 著者 | 呉勝浩 |
| 版元 | 中央公論新社(単行本) |
| 発売日 | 2026年10月21日 |
| 判型・ページ | 四六判・368ページ |
| 定価 | 2,310円(税込・本体2,100円) |
| ISBN | 978-4-12-006069-4 |
| Cコード | C0093(一般・単行本・日本文学) |
出典:版元ドットコム(中央公論新社登録データ)(2026年10月4日時点)
書名の「蒼羽さん」は人名の形ですが、版元の内容紹介に蒼羽という人物の説明はありません。「◯◯さん事件」という言い方は事件が世間でどう呼ばれているかを示す形で、題名自体が「報道される側の名前」になっています。
蒼羽さん事件のあらすじ|止まった捜査と、十年後に現れた一件の投稿

失踪した女子高生が、腐乱死体で見つかる
ひとりの女子高生が失踪し、腐乱死体となって発見されました。
最有力容疑者のアリバイが成立し、捜査は暗礁に乗り上げる
複数の援助交際をしていた男が最有力容疑者でしたが、アリバイが成立します。捜査は暗礁に乗り上げました。
約十年後、ノンフィクション作家が被害者のアカウントを知る
ここから物語が動きます。未解決のまま約十年後、あるノンフィクション作家が、ひょんなことから被害者のTwitterアカウントらしきものを知ります。
手がかりは「チョウチョのところ19」という前日の投稿
作家が着目するのは事件前日の「チョウチョのところ19」という意味深な投稿です。取材を重ねて書き始めますが——。
そして問われるのは「この本、出せますか?」
版元が内容紹介の最後に置く一行がこれです。「この本、出せますか?」
出典:版元ドットコム(中央公論新社登録データ)の内容紹介(2026年10月4日時点)
蒼羽さん事件の3つの読みどころ

1. 事件を解く話ではなく、「事件を書く」話として組まれている
版元の内容紹介の構造が、そのまま本作の仕掛けを示しています。
| 層 | 誰が動くか | 何をするか |
|---|---|---|
| 第1層 | 警察 | 容疑者を絞るが、アリバイで止まる |
| 第2層 | ノンフィクション作家 | 約十年後に取材し、書こうとする |
| 問い | 版元のキャッチ | 「この本、出せますか?」 |
捜査が止まったところから十年飛ぶという組み方なので、本作の主な駆動力は捜査ではなく取材と執筆です。そして「この本、出せますか?」という問いの向き先は、犯人ではなく書く側です。
書けば誰かが傷つくかもしれない、しかし書かなければ事件は未解決のまま残る——ノンフィクションを書く行為そのものが審判にかけられる構えになっています。
呉勝浩は大阪芸術大学映像学科の出身で、「語る側・記録する側」を主題に据えることがある作家です。『爆弾』は取調室という「言葉だけが動く場所」を舞台にした作品でした。
2. 手がかりが「チョウチョのところ19」という一件の投稿しかない
本作が読者に渡す具体的な手がかりは、現時点で公表されているかぎり一つだけです。
「チョウチョのところ19」。
版元はこれを「意味深な投稿」と書きます。事件前日という時点だけが分かっています。
SNSの投稿が手がかりになるという設定は、約十年という時間差とセットで効きます。事件当時は誰も見ていなかった、あるいは意味が分からなかった短い文字列が、十年後に取材する人間の目に留まる——という構造です。「チョウチョ」が場所の通称なのか、人の呼び名なのか、「19」が数字として何を指すのかは、公表情報からは分かりません。
3. 受賞歴が一段ずつ上がってきた作家の、現在地
呉勝浩は1981年青森県八戸市生まれ。受賞歴が段階的に積み上がってきた作家です。
| 年 | 作品 | 受賞 |
|---|---|---|
| 2015年 | 道徳の時間 | 第61回江戸川乱歩賞(デビュー) |
| 2018年 | 白い衝動 | 大藪春彦賞 |
| 2020年 | スワン | 吉川英治文学新人賞+日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)の同時受賞 |
| 2022年 | 爆弾 | このミステリーがすごい!2023年版 国内編第1位/ミステリが読みたい!2023年版 国内編第1位 |
出典:版元ドットコム(中央公論新社登録データ)の著者紹介(2026年10月4日時点)
『スワン』で吉川英治文学新人賞と推理作家協会賞を同じ年に取り、『爆弾』で年間ランキング2つの1位という流れです。デビューから約11年で、新人賞→個人賞→年間ランキング1位まで通った作家の新作にあたります。
版元が中央公論新社であることも押さえどころです。『スワン』『爆弾』はいずれも別の版元から出ており、本作は版元をまたいだ新作です。
蒼羽さん事件に関するよくある質問
シリーズものですか
いいえ。単独の長編です。版元の書誌情報にシリーズ表記はなく、前提となる既刊はありません。『スワン』『爆弾』を読んでいなくても単体で読めます。
実際の事件が元になっていますか
版元の内容紹介に、実在の事件への言及はありません。フィクションです。作中にノンフィクション作家が登場して実在しない事件を取材するという構成であり、作品そのものがノンフィクションというわけではありません。
文庫版はいつ出ますか
2026年10月4日時点で未公表です。
発売日が10月25日と書かれている場所がありますが、どちらですか
書店に並ぶのは2026年10月21日です。版元ドットコムには「発売予定日 2026年10月21日」と「初版年月日 2026年10月25日」の2つが載っていますが、初版年月日は奥付に印刷される日付で、書店発売日ではありません。
警察小説ですか
版元は警察小説として紹介していません。冒頭に捜査の経緯は出ますが、捜査は早い段階でアリバイにより止まり、物語の主軸は約十年後のノンフィクション作家の取材に移ります。警察小説として読むより、取材と執筆をめぐるミステリーとして読むのが向いています。
「チョウチョのところ19」とは何ですか
版元の内容紹介では「事件前日の意味深な投稿」としてのみ示されています。意味の説明はありません。作中で作家がこの投稿に着目して取材を重ねることだけが公表されています。
「蒼羽さん」は誰ですか
版元の内容紹介に蒼羽という人物の説明はありません。題名が「◯◯さん事件」という事件の呼び名の形をとっていることのみ分かっています。
呉勝浩を初めて読みます。どれから読むべきですか
本作から読めます。代表作から入りたいなら『爆弾』(このミステリーがすごい!2023年版 国内編1位・取調室が舞台)か、『スワン』(吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞の同時受賞)が入口です。デビュー作から読みたいなら『道徳の時間』(2015年・第61回江戸川乱歩賞)です。
読了時間はどれくらいですか
368ページなので、通しで6〜7時間が目安です。
まとめ|「この本、出せますか?」と問われるのは書く側
- 『蒼羽さん事件』は2026年10月21日・中央公論新社・2,310円(税込)・四六判368ページ
- 女子高生が失踪し、腐乱死体で見つかる。最有力容疑者はアリバイ成立で捜査が止まる
- 未解決のまま約十年後、ノンフィクション作家が被害者のアカウントらしきものを知る
- 手がかりは事件前日の「チョウチョのところ19」という投稿ひとつ
- ★版元のキャッチは「この本、出せますか?」。問われるのは犯人ではなく書く側
- 著者は江戸川乱歩賞でデビューし、『スワン』で吉川英治文学新人賞と推理作家協会賞を同時受賞、『爆弾』で年間ランキング2つの1位
捜査が止まった事件を、十年後に誰かが書こうとする。事件を解く話としてではなく、書くことの是非を問う話として組まれているのが本作の形です。最後の一行が読者にも向いています。




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