『やぶにらみの天使』は、筒井康隆のショートショート集で、2026年12月16日に新潮社から出ます。2,255円(税込・本体2,050円)・四六判変型320ページ。
これは「出ないはずだった本」です。
筒井康隆は2023年11月に『カーテンコール』を「これがわが最後の作品集になるだろう」と宣言して出しました。当サイトはその文庫化(2026年10月28日)に合わせて、宣言後3年の刊行を全部洗い、「新作の小説集は1冊も出ていない=宣言は守られている」と書きました。
その宣言は、2026年12月16日に終わります。 版元の紹介文の1行目はこうです。
92歳文豪、奇跡のショートショート50篇を引っさげて小説世界に帰還!
出典:新潮社『やぶにらみの天使』(2026年10月28日時点)
「帰還」と書いているのは新潮社自身です。この記事では、なぜ戻ってこられたのかを版元の一次資料から整理します。
※本ページはアフィリエイトリンクを含みます。
※本記事は発売前に公表された情報にもとづいています。
- 2026年12月16日・新潮社・2,255円(税込)・320ページ
- 92歳の新作ショートショート50篇
- 『カーテンコール』の「最後の作品集」宣言後、初の新作小説集
やぶにらみの天使とは|92歳の新作ショートショート50篇
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 著者 | 筒井康隆 |
| 版元 | 新潮社 |
| 発売日 | 2026年12月16日 |
| 初版年月日 | 2026年12月15日 |
| 判型 | 四六判変型 |
| ページ | 320ページ |
| 価格 | 2,255円(税込・本体2,050円) |
| ISBN | 978-4-10-314538-7 |
| Cコード | C0093(一般・単行本・日本文学) |
| 収録 | ショートショート50篇 |
| 電子書籍 | あり(2026年12月16日配信・2,255円) |
| 初出 | 新潮社のPR誌「波」から生まれた本 |
出典:新潮社『やぶにらみの天使』、版元ドットコム(2026年10月28日時点)
320ページに50篇なので、1篇あたり約6.4ページです。
★新潮社の「発売日」と「初版年月日」は、本によってずれ方が違う
本作は初版年月日が2026年12月15日、発売予定日が2026年12月16日です。初版の日付が発売日より1日早いという並びです。
| 本 | 発売日 | 初版年月日 | 差 |
|---|---|---|---|
| やぶにらみの天使 | 2026年12月16日 | 2026年12月15日 | 初版が1日早い |
| カーテンコール(新潮文庫) | 2026年10月28日 | 2026年11月1日 | 初版が4日遅い |
| (同月)宮部みゆき『十一色の果実』 | 2026年12月16日 | 2026年12月15日 | 初版が1日早い |
同じ新潮社でも、文庫と単行本でずれ方が逆になります。 12月16日発売の単行本2点はどちらも「初版が1日早い」ので、ずれ方は刊行形態と時期ごとに決まるとみられます。
版元の紹介文|頸椎損傷・車椅子・2年ぶりの筆

新潮社の紹介文は、本作が生まれた経緯を具体的に書いています。
92歳文豪、奇跡のショートショート50篇を引っさげて小説世界に帰還!
〈最後の作品集〉と銘打った名作『カーテンコール』刊行後、頸椎損傷によって車椅子生活となった作家は、ある日思い立って2年ぶりに創作の筆を執り、一篇のショートショートを完成させる。翌々日、さらにもう一篇が完成──。奇跡の創作力で生み出された、読者を楽しませる技と書く歓びにあふれたショートショート50篇!
出典:新潮社『やぶにらみの天使』(2026年10月28日時点)
版元がここで初めて明かしたこと
この紹介文には、当サイトが2026年10月に『カーテンコール』の記事を書いた時点では公表されていなかった事実が3つ入っています。
| 版元が書いたこと | 分かること |
|---|---|
| 「頸椎損傷によって車椅子生活となった」 | 『カーテンコール』刊行後に大きな受傷があった |
| 「ある日思い立って2年ぶりに創作の筆を執り」 | 約2年、小説を書いていなかった時期がある |
| 「一篇を完成させる。翌々日、さらにもう一篇が完成」 | 再開後の進みがきわめて速かった |
「2年ぶり」の起点(受傷の時期か、前作の執筆終了時か)は版元が明示していませんので、本記事では具体的な年月の特定は避けます。
「翌々日、さらにもう一篇」という書き方
版元は再開の瞬間を2文に分けて書いています。 1篇完成 → 翌々日 にもう1篇。その積み上げが50篇になりました。
ショートショートという形式が、ここで意味を持ちます。長篇は体力と時間を要しますが、ショートショートは1篇ごとに完結するため、書ける日に書いた分がそのまま作品になります。 50篇という数は、再開してからの積み上げの結果です。
『カーテンコール』の宣言はこれで破られる|編集者は当時から「信じていません!」

ここが本作のいちばん面白いところです。
『カーテンコール』単行本(2023年11月1日・新潮社)の紹介文を読むと、宣言のすぐ横に、編集者の反論が括弧書きで入っています。
著者曰く「これがおそらくわが最後の作品集になるだろう」(編集者「信じていません!」)。
出典:新潮社『カーテンコール』単行本(2026年10月28日時点)
版元が、著者の宣言と同じ行に「信じていません!」を並べて売っていたのです。そして3年後、編集者の側が当たりました。
| 時点 | 版元のスタンス |
|---|---|
| 2023年11月(カーテンコール単行本) | 著者「わが最後の作品集になるだろう」/編集者「信じていません!」 |
| 2026年10月28日(カーテンコール文庫) | 「著者自ら…と宣言した伝説的一冊が、待望の文庫化!」 |
| 2026年12月16日(本作) | 「92歳文豪、…小説世界に帰還!」 |
出典:新潮社『カーテンコール』単行本、新潮社『カーテンコール』文庫、新潮社『やぶにらみの天使』(2026年10月28日時点)
→ 「最後の作品集」の文庫化(10月28日)と、その宣言を破る新作(12月16日)が、同じ年の49日違いで出ます。
2冊を並べると、形式がさらに短くなっている
| カーテンコール(単行本) | やぶにらみの天使 | |
|---|---|---|
| 刊行 | 2023年11月1日 | 2026年12月16日 |
| 判型 | 四六判 | 四六判変型 |
| ページ | 256ページ | 320ページ |
| 収録 | 掌篇25篇(+附・山号寺号) | ショートショート50篇 |
| 1篇あたり | 約10.2ページ | 約6.4ページ |
| 価格(税込) | 1,870円 | 2,255円 |
| 初出 | 「波」中心(文學界・新潮にも) | 「波」から生まれた本 |
出典:新潮社『カーテンコール』単行本、新潮社『やぶにらみの天使』(2026年10月28日時点)
→ 篇数は2倍、1篇の長さは約6割になりました。どちらも新潮社のPR誌「波」から生まれた本です。「波」という同じ場所で、掌篇から更に短いショートショートへ移ったという形です。
やぶにらみの天使の3つの読みどころ

1. 「書けなくなった」あとに書かれた本である
頸椎損傷で車椅子生活になり、約2年書いていなかったという経緯が版元から明かされています。その状態から「ある日思い立って」再開したというのが本作です。
版元は「奇跡の創作力」「書く歓び」という語を使っています。 読者を楽しませる技という言い方も添えられています。事情を背負った本であることを、版元が隠していません。
2. ショートショートは筒井康隆の出発点に近い形式
筒井康隆は1960年に弟3人とSF同人誌〈NULL〉を創刊し、その雑誌が江戸川乱歩に認められて「お助け」が〈宝石〉に転載されてキャリアが始まりました。1965年の処女作品集が『東海道戦争』です。
短い小説から始まった作家が、92歳で50篇の短い小説を書いたという並びになります。ただし版元は形式選択の理由を説明していないので、本記事ではそこに意味づけはしません。
3. 1篇あたり約6.4ページで区切って読める
320ページ÷50篇=約6.4ページです。『カーテンコール』の約10.2ページよりさらに短いので、1日1篇でも50日という読み方ができます。
初めて筒井康隆を読む人にも入りやすい分量です。一方で『カーテンコール』の「プレイバック」のように過去作の登場人物が集まる趣向が本作にあるかどうかは、2026年10月28日時点で公表されていません。
筒井康隆の「やめる/再開する」は2度目|3年3カ月の断筆

版元の著者プロフィールには、もう1つの中断が記録されています。
1996年12月、3年3カ月に及んだ断筆を解除。
出典:新潮社『カーテンコール』文庫の著者プロフィール(2026年10月28日時点)
つまり筒井康隆には、書くのをやめて再開した前例があります。
| 回 | 中断 | 再開 |
|---|---|---|
| 1回目 | 3年3カ月に及んだ断筆 | 1996年12月に解除 |
| 2回目 | 『カーテンコール』後の約2年(頸椎損傷・車椅子生活) | 本作で「小説世界に帰還」 |
出典:新潮社『カーテンコール』文庫、新潮社『やぶにらみの天使』(2026年10月28日時点)
→ 「最後の作品集」という宣言を、前例を知っている読者が文字どおりに受け取らなかったのは自然なことでした。版元の編集者が2023年に「信じていません!」と書いたのも、この前例があるからと読めます。
なお1回目の断筆は表現上の問題をめぐるもの、2回目は身体の問題で、性質は違います。 本記事は「中断して再開した経験が2度ある」という事実までを示します。
筒井康隆について|〈NULL〉から毎日芸術賞まで
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1934年 | 大阪市生まれ(同志社大学卒) |
| 1960年 | 弟3人とSF同人誌〈NULL〉創刊。江戸川乱歩に認められ「お助け」が〈宝石〉に転載 |
| 1965年 | 処女作品集『東海道戦争』 |
| 1981年 | 『虚人たち』で泉鏡花文学賞 |
| 1987年 | 『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞 |
| 1989年 | 「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞 |
| 1992年 | 『朝のガスパール』で日本SF大賞 |
| 1996年12月 | 3年3カ月に及んだ断筆を解除 |
| 1997年 | パゾリーニ賞 |
| 2000年 | 『わたしのグランパ』で読売文学賞 |
| 2002年 | 紫綬褒章 |
| 2010年 | 菊池寛賞 |
| 2017年 | 『モナドの領域』で毎日芸術賞 |
| 2023年11月 | 『カーテンコール』(「最後の作品集」宣言) |
| 2026年12月16日 | 『やぶにらみの天使』 |
出典:新潮社『やぶにらみの天使』の著者プロフィール(2026年10月28日時点)
他の著書に『家族八景』『敵』『不良老人の文学論』『老人の美学』『ジャックポット』『筒井康隆自伝』『筒井康隆、九十歳のあとさき』など。 日本SFの流れはSF小説おすすめ18選、純文学おすすめ20選でも整理しています。
やぶにらみの天使に関するよくある質問
やぶにらみの天使は新作ですか
はい。 ショートショート50篇の新作集です。版元は「92歳文豪、奇跡のショートショート50篇を引っさげて小説世界に帰還!」と書いています。既刊の再編ではありません。
『カーテンコール』の「最後の作品集」宣言はどうなったのですか
本作で終わります。 『カーテンコール』単行本の紹介文には、著者の宣言と並べて編集者の「信じていません!」が書かれていました。3年後に編集者の側が当たったことになります。
どんな話が入っていますか
2026年10月28日時点で、版元は収録50篇の題を公表していません。 分かっているのは「ショートショート50篇」「読者を楽しませる技と書く歓びにあふれた」という版元の記述までです。
『カーテンコール』を読んでいないと分かりませんか
本作は独立した新作集です。ただし『カーテンコール』には過去作のキャラクターが集まる「プレイバック」が入っており、そちらを先に読むと筒井作品の全体像がつかめます。 文庫版は2026年10月28日に新潮文庫(693円)で出ています。
頸椎損傷について版元はどこまで書いていますか
「〈最後の作品集〉と銘打った名作『カーテンコール』刊行後、頸椎損傷によって車椅子生活となった」という1文です。受傷の時期や詳細は書かれていません。 「2年ぶりに創作の筆を執り」という記述の起点も明示されていません。
筒井康隆は何歳ですか
1934年生まれです。版元は本作の紹介で「92歳文豪」と書いています。『カーテンコール』単行本が出た2023年11月には89歳でした。
ショートショートと掌篇は違うものですか
どちらも短い小説を指す言い方です。本作で版元が使うのは「ショートショート」、『カーテンコール』で使われていたのは「掌篇」です。1篇あたりのページ数は本作が約6.4ページ、『カーテンコール』が約10.2ページで、本作のほうが短い計算になります。
電子書籍は同時に出ますか
出ます。 2026年12月16日配信開始・価格は紙と同じ2,255円です。
まとめ|「最後」と言った本の文庫化から49日後に、新作が出る
- 『やぶにらみの天使』は2026年12月16日・新潮社・2,255円(税込)・四六判変型320ページ
- ショートショート50篇の新作集。1篇あたり約6.4ページ
- 版元の1行目は「92歳文豪、奇跡のショートショート50篇を引っさげて小説世界に帰還!」
- 『カーテンコール』刊行後、頸椎損傷によって車椅子生活となり、約2年ぶりに筆を執って1篇を完成。翌々日にもう1篇
- 『カーテンコール』単行本の紹介文には、著者の宣言と並べて編集者の「信じていません!」が書かれていた
- 「最後の作品集」の文庫化(10月28日)から49日後に新作が出る
- 筒井康隆には1996年12月に「3年3カ月に及んだ断筆を解除」した前例がある=中断と再開は2度目
「これがわが最後の作品集になるだろう」と書いた本の編集者が、その横で「信じていません!」と書いていた。3年後、そちらが当たりました。50篇の新作が、92歳の手から出てきます。



コメント