京極夏彦の第130回直木賞受賞作『後巷説百物語』のあらすじ・登場人物・読みどころを徹底解説。明治の世から振り返る御行の又市と仕掛けの一党の物語、シリーズ屈指の傑作。
最終更新日: 2026年5月18日※本ページはアフィリエイトリンクを含みます。
- 第130回直木賞受賞作・巷説百物語シリーズ第3作
- 角川文庫版・Kindle版・特装版BOXあり
- 老境の百介が振り返る7つの妖怪譚
後巷説百物語の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 著者 | 京極夏彦 |
| 刊行 | 2003年8月(角川書店) |
| 文庫化 | 2007年7月(角川文庫) |
| ページ数 | 約800ページ(文庫版) |
| シリーズ | 巷説百物語シリーズ第3作 |
| ジャンル | 妖怪時代小説・連作短編集 |
| 受賞 | 第130回直木賞受賞(2004年) |
後巷説百物語のあらすじ(ネタバレなし)

明治三十年代。文明開化が進み、妖怪が居場所を失いつつある世——。
かつて若き戯作者として「御行の又市」率いる仕掛けの一党と関わりを持った山岡百介は、すでに老境に至っていた。彼のもとを訪れる若者たちに、百介は江戸の昔を回想する形で、語り継がれざる7つの妖怪譚を語り出す。
「赤えいの魚」「天火」「手の目」「五位の光」「風の神」「春の虹」「鬼熊」——明治の世になって初めて明かされる、又市たちが手掛けた仕掛けの「裏側」。
それぞれの仕掛けが、誰のため、何のために行われたのか。百介は語りながら、自らの記憶と向き合っていく。そして最終話では、シリーズ前2作で残された最大の謎——又市の真意——が明らかになる。
後巷説百物語の主要登場人物

| 人物 | 役割 | 特徴 |
|---|---|---|
| 山岡百介 | 老境の語り手 | かつての戯作者「考物の百介」。一党の活動を後世に伝える役割 |
| 御行の又市 | 仕掛けの一党のリーダー | 百介の回想の中に登場。すべての仕掛けの首謀者 |
| 山猫廻しの治平 | 一党の古参・知恵袋 | 又市の片腕 |
| おぎん | 仕掛けの一党の紅一点 | 又市の妻となる女性 |
| 長耳の伊三次 | 情報屋 | 諸国の噂を集める |
| 山岡東雲 | 百介の孫 | 百介の話を聞き継ぐ若者 |
| 平湯小一郎 | 読本作家 | 百介に取材する若い作家 |
後巷説百物語の見どころ・読みどころ

1. 直木賞受賞作としての完成度
第130回直木賞受賞作。「文学性」と「エンターテイメント性」を両立した稀有な妖怪時代小説として、選考委員から高い評価を受けました。北方謙三・林真理子ら審査員が満票で授賞を決定した名作です。
2. 「振り返り」という独自の構造
本作の最大の特徴は、老境の百介が「過去の事件」を振り返って語る構造。シリーズ前2作で進行形だった事件が、時間の経過と共に新たな意味を帯びる——この時間軸の操作が、本作の文学的深みを生み出しています。
3. シリーズ初心者にも優しい構成
連作短編集形式で、各話が独立しているためシリーズ未読の方でも単独で楽しめる構成です。読了後、第1作『巷説百物語』に遡って読み直すと、伏線の張り方の巧妙さに改めて驚かされます。
4. 又市たちの「終わり」を予感させる物語
仕掛けの一党が活躍した江戸の世から、文明開化の明治へ——時代の変化と共に消えていく妖怪と仕掛師たち。「物語の終わりはいつか必ず来る」という哀切なテーマが、本作全体を貫いています。
5. 古典怪談「百物語」のフレームワーク
本作は江戸時代の怪談語り「百物語」をフレームワークに使った構成。怪談一つを語るごとに蝋燭を一本消し、百話語り終えると本物の怪が現れる——この古典的な趣向が、又市たちの仕掛けに重ね合わされています。
後巷説百物語に関するよくある質問
Q. シリーズ未読でも読めますか?
A. はい、連作短編集形式で各話が独立しているため、シリーズ未読の方でも単独で楽しめます。むしろ本作で巷説百物語シリーズの世界観に触れて、興味が湧いたら第1作『巷説百物語』に遡るのも一つの読み方です。
Q. なぜ直木賞を受賞できたのですか?
A. 妖怪時代小説でありながら「人間心理の深淵」と「歴史の重み」を描いた文学性が高く評価されました。エンタメ作家が描く時代小説の到達点として、選考委員満場一致で授賞が決まったとされています。
Q. 続編はありますか?
A. はい。次作『前巷説百物語』では又市たちの若き日の前日譚が描かれ、続く『西巷説百物語』『遠巷説百物語』を経て、2023年の完結編『了巷説百物語』でシリーズが完結しました。
Q. 百鬼夜行シリーズとの関係は?
A. 世界観は独立しています。百鬼夜行は昭和初期の現代ミステリ、巷説百物語は江戸〜明治の時代小説で、登場人物の重複はありません。ただし両シリーズに「考物」「憑物」など共通モチーフがあり、京極夏彦の妖怪観が共通基盤を成しています。
Q. 文庫版は厚いですか?
A. 角川文庫版は約800ページとやや厚めですが、百鬼夜行シリーズの『鉄鼠の檻』『絡新婦の理』(約1380p)と比べれば読みやすい分量です。連作短編集なので途中で休憩しやすい構成です。
まとめ|後巷説百物語は京極夏彦入門の決定版
『後巷説百物語』は京極夏彦が直木賞という大舞台で評価された傑作妖怪時代小説。「妖怪が居場所を失う近代化の哀しみ」と「人間心理の深淵」を、又市たちの仕掛けを通して描く構成は、エンタメ時代小説の到達点と評されます。
こんな人におすすめ:
– 京極夏彦の代表作を読みたい方
– 妖怪・民俗学に興味がある方
– 連作短編集が好きな方
– 江戸〜明治の時代小説が好きな方
– 直木賞受賞作を網羅したい方
読み終えたら次は:
1. シリーズ第1作『巷説百物語』に遡る
2. 又市の若き日を描く『前巷説百物語』へ
3. 完結編『了巷説百物語』までシリーズを制覇
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