『舞踏会』は、芥川龍之介の短編集で、2026年12月25日に角川文庫から出ます。924円(税込・本体840円)・文庫判304ページ。収録は16編です。
これは新しく編まれた本ではありません。 1968年11月1日に角川文庫から出た『舞踏会・蜜柑』の、58年ぶりの改題新版です。
書名から「蜜柑」が落ち、ページが272から304に増え、価格は968円から924円に下がりました。 そして版元の紹介文は、1968年のものと一字一句同じです。
夜空に消える一閃の花火に人生を象徴させる「舞踏会」や、見知らぬ姉妹の情に安らぎを見出す「蜜柑」。表題作の他、「沼地」「竜」「疑惑」「魔術」など大正8年の作品計16編を収録。
出典:版元ドットコム『舞踏会』、KADOKAWA『舞踏会・蜜柑』(2026年11月2日時点)
この記事では、収録16編の初出と文字数を青空文庫で全部実測し、旧版との違いを整理します。その結果、紹介文が書く「大正8年の作品」という説明と、表題作の初出が合っていないことが分かりました。
※本ページはアフィリエイトリンクを含みます。
※本記事は発売前に公表された情報にもとづいています。
- 2026年12月25日・角川文庫・924円(税込)・304ページ
- 「舞踏会」「蜜柑」「魔術」など16編を収録
- 1968年の『舞踏会・蜜柑』の改題新版。32ページ増えて44円安い
舞踏会(角川文庫)とは|16編・304ページ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書名 | 舞踏会 |
| 著者 | 芥川龍之介(1892年−1927年) |
| 版元・レーベル | KADOKAWA・角川文庫 |
| 発売予定日 | 2026年12月25日 |
| 初版年月日 | 2026年12月25日 |
| 判型 | 文庫判(右開き) |
| ページ | 304ページ |
| 価格 | 924円(税込・本体840円) |
| ISBN | 978-4-04-118138-6 |
| Cコード | C0193(0:一般/1:文庫/93:日本文学、小説・物語) |
| 収録 | 16編 |
| もとの版 | 『舞踏会・蜜柑』(1968年11月1日・角川文庫) |
出典:版元ドットコム『舞踏会』(2026年11月2日時点)
★旧版『舞踏会・蜜柑』と並べる|ページが増えて価格が下がった

| 舞踏会・蜜柑(1968年) | 舞踏会(2026年・本作) | |
|---|---|---|
| 発売日 | 1968年11月1日 | 2026年12月25日 |
| 初版年月日 | 1968年10月30日 | 2026年12月25日 |
| 書名 | 舞踏会・蜜柑 | 舞踏会 |
| ページ | 272ページ | 304ページ(+32) |
| 価格(税込) | 968円 | 924円(−44円) |
| 本体価格 | 880円 | 840円(−40円) |
| ISBN | 978-4-04-103304-3 | 978-4-04-118138-6 |
| Cコード | C0193 | C0193 |
| 紹介文 | (下記のとおり同一) | (同一) |
| 電子版 | あり(2000年9月1日配信) | 2026年11月2日時点で未公表 |
出典:KADOKAWA『舞踏会・蜜柑』、版元ドットコム『舞踏会・蜜柑』、版元ドットコム『舞踏会』(2026年11月2日時点)
改版でページが32増えたのに、価格は44円下がりました。 1ページあたりは3.56円から3.04円になります。
文庫の改版はふつう値上がりします。 当サイトが2026年に扱った『金沢 歴史の殺人 新装版』では、同じ双葉文庫で552円から946円になっていました。本作は逆です。
1968年版の880円(本体)は、重版のたびに改定されてきた現在の定価です。58年のあいだに積み上がった価格を、新版が840円にリセットしたというかたちになります。
書名から「蜜柑」が落ちた
旧版の書名は『舞踏会・蜜柑』で、2編を並べた題でした。新版は『舞踏会』だけです。
ただし「蜜柑」は収録から外れていません。 新版の目次にも「蜜柑」が入っています(後述)。紹介文も「表題作の他」として「蜜柑」に触れています。
→ 書店やネット書店で『舞踏会・蜜柑』を探している人は、『舞踏会』が同じ本だと知っておく必要があります。書名だけで別の本だと思うと買い逃します。
紹介文は58年前と同じ文章
KADOKAWA公式の『舞踏会・蜜柑』のページと、版元ドットコムの『舞踏会』(新版)の紹介文は、一字一句同じです。
夜空に消える一閃の花火に人生を象徴させる「舞踏会」や、見知らぬ姉妹の情に安らぎを見出す「蜜柑」。表題作の他、「沼地」「竜」「疑惑」「魔術」など大正8年の作品計16編を収録。
「大正8年」の「8」が全角のままという細部まで共通です。改題はしたが、紹介文は更新していないことになります。
なお2026年11月2日時点で、KADOKAWA公式サイトに新版『舞踏会』のページはありません。 公式で見られるのは1968年版のほうだけです。
収録16編の目次|版元が全部公開している
| # | 題名 | 青空文庫 | 初出(青空文庫の図書カード) |
|---|---|---|---|
| 1 | きりしとほろ上人伝 | ○ | 「新小説」1919(大正8)年3、5月 |
| 2 | 蜜柑 | ○ | 「新潮」1919(大正8)年5月 |
| 3 | 沼地 | ○ | 「新潮」1919(大正8)年5月 |
| 4 | 竜 | ○ | 「中央公論」1919(大正8)年5月 |
| 5 | 疑惑 | ○ | 「中央公論」1919(大正8)年7月 |
| 6 | 路上 | ○ | 「大阪毎日新聞」1919(大正8)年6月30日〜8月8日 |
| 7 | じゅりあの・吉助 | ○ | 「新小説」1919(大正8)年9月 |
| 8 | 魔術 | ○ | 「赤い鳥」1920(大正9)年1月 |
| 9 | 葱 | ○ | 「新小説」1920(大正9)年1月 |
| 10 | 鼠小僧次郎吉 | ○ | 「中央公論」1920(大正9)年1月 |
| 11 | 舞踏会(表題作) | ○ | 「新潮」1920(大正9)年1月 |
| 12 | 尾生の信 | ○ | 「中央文学」1920(大正9)年1月 |
| 13 | 入社の辞 | ○ | (青空文庫に記載なし) |
| 14 | 東京小品 | ○ | (青空文庫に記載なし) |
| 15 | 芸術その他 | ○ | (青空文庫に記載なし) |
| 16 | 我鬼窟日録 | × | — |
出典:版元ドットコム『舞踏会』目次、青空文庫 芥川龍之介の各図書カード(2026年11月2日時点)
★紹介文は「大正8年の作品」と書くが、表題作は大正9年初出

版元の紹介文は「大正8年の作品計16編を収録」です。しかし初出で照合すると、合いません。
| 初出年 | 編数 | 作品 |
|---|---|---|
| 1919(大正8)年 | 7編 | きりしとほろ上人伝/蜜柑/沼地/竜/疑惑/路上/じゅりあの・吉助 |
| 1920(大正9)年 | 5編 | 魔術/葱/鼠小僧次郎吉/舞踏会/尾生の信 |
| 青空文庫に初出記載なし | 3編 | 入社の辞/東京小品/芸術その他 |
| 青空文庫にない | 1編 | 我鬼窟日録 |
初出が確認できた12編のうち、5編が大正9年です。しかも表題作「舞踏会」そのものが、「新潮」1920(大正9)年1月号の初出です。
大正9年初出の5編は、全部「1920年1月」に集まっています。 掲載誌は「赤い鳥」「新小説」「中央公論」「新潮」「中央文学」の5誌で、同じ月に5誌へ一斉に発表されたという並びです。
「大正8年の作品」はどう読むべきか
ここで断定は避けます。 考えられる読み方は2つです。
| 読み方 | 内容 |
|---|---|
| 執筆年で数えている | 大正9年1月号の雑誌は、ふつう前年の12月ごろに原稿が渡ります。「大正8年に書かれた作品」という意味なら矛盾しません |
| 初出年で数えている | その場合は5編が大正9年なので、紹介文の「大正8年」は厳密ではないことになります |
版元は「大正8年」が執筆年か初出年かを書いていません。 雑誌の号月と執筆時期は一致しないため、どちらが正しいかは本書の解題で確かめる必要があります。
→ 買う側にとって実務的に重要なのは、「大正8年前後の、芥川の中期の作品を16編まとめた本」という点です。年を1年単位で気にする必要はありません。
★16編のうち15編は青空文庫で読める。「我鬼窟日録」だけがない
青空文庫には芥川龍之介の作品が379件登録されています。 収録16編を1件ずつ照合した結果、15編が見つかり、「我鬼窟日録」だけが見つかりませんでした(2026年11月2日実測)。
| 件数 | |
|---|---|
| 青空文庫で読める | 15編 |
| 青空文庫にない | 1編(我鬼窟日録) |
→ 本文を無料で読みたいだけなら、15編は青空文庫で足ります。 本作を買う意味は、(1)「我鬼窟日録」が読める(2)16編が1冊に並んでいる(3)紙の文庫で読めるの3点になります。
「我鬼窟日録」の「我鬼」は芥川龍之介の俳号です。日録=日記なので、小説ではなく日記体の文章とみられます。青空文庫に入っていない以上、本作が手に入れやすい収録先になります。
★15編の文字数を全部数えた|最長は「路上」の42,901字

青空文庫の本文(ルビを除く)で文字数を実測しました。
| 順 | 題名 | 文字数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 1 | 路上 | 42,901字 | 33.7% |
| 2 | 疑惑 | 12,286字 | 9.7% |
| 3 | 鼠小僧次郎吉 | 12,259字 | 9.6% |
| 4 | きりしとほろ上人伝 | 12,238字 | 9.6% |
| 5 | 竜 | 9,361字 | 7.4% |
| 6 | 葱 | 8,110字 | 6.4% |
| 7 | 魔術 | 7,142字 | 5.6% |
| 8 | 舞踏会(表題作) | 5,079字 | 4.0% |
| 9 | 東京小品 | 4,277字 | 3.4% |
| 10 | 芸術その他 | 3,665字 | 2.9% |
| 11 | 蜜柑 | 3,151字 | 2.5% |
| 12 | じゅりあの・吉助 | 1,905字 | 1.5% |
| 13 | 沼地 | 1,837字 | 1.4% |
| 14 | 尾生の信 | 1,596字 | 1.3% |
| 15 | 入社の辞 | 1,335字 | 1.1% |
| 15編の合計 | 127,142字 | 100% |
出典:青空文庫の各作品本文を当サイトで実測(ルビを除外・2026年11月2日時点)
「路上」1編で全体の3分の1(33.7%)を占めます。「大阪毎日新聞」に1919年6月30日から8月8日まで連載された作品で、この本のなかで唯一、新聞連載の長さを持っています。
表題作「舞踏会」は5,079字で、「路上」の8.4分の1です。全体の4.0%しかありません。書名になっている作品が、分量では8番目ということになります。
最短は「入社の辞」の1,335字で、「路上」の32分の1です。
分量の偏りは、読み方に関わる
304ページのうち、「路上」が約3分の1を占める計算になります。残り15編を約200ページで読むことになるので、「路上」以外は1編あたり十数ページです。
| 読み方 | 向き |
|---|---|
| 表題作から読む | 「舞踏会」は5,079字。10分ほどで読める |
| 有名作から読む | 「蜜柑」3,151字・「魔術」7,142字。どちらも短い |
| 腰を据えて読む | 「路上」42,901字。この本の中心的な分量 |
→ 「芥川を短いものから試したい」人には、「尾生の信」「沼地」「じゅりあの・吉助」「蜜柑」が2,000〜3,000字台で並んでいるので、入口として扱いやすい1冊です。
舞踏会(角川文庫)の3つの読みどころ
1. 表題作は5,079字。花火の一閃で人生を見せる
版元の紹介文は「夜空に消える一閃の花火に人生を象徴させる」と書きます。5,079字という短さで、人生のかたちを見せる作品です。『羅生門』と同じく、短さが効く書き方です。
2. 小説以外も入っている
16編は小説だけではありません。 「入社の辞」「東京小品」「芸術その他」「我鬼窟日録」は、随筆・小品・日記体の文章です。小説16編の本ではなく、同時期の芥川の文章を幅広く集めた本です。
3. 58年ぶりに組み直されている
272ページから304ページに増えているので、文字が大きくなっている可能性が高いです(版元は文字サイズを公表していません)。1968年版を持っている人でも、読みやすさのために買い直す意味がある数字です。
舞踏会(角川文庫)に関するよくある質問
『舞踏会・蜜柑』とは別の本ですか
同じ本の改題新版です。 1968年11月1日の『舞踏会・蜜柑』が、2026年12月25日に『舞踏会』として出ます。 紹介文は一字一句同じで、「蜜柑」も収録に残っています。
旧版を持っています。買い直す必要はありますか
本文を読む目的なら不要です。 ただし272ページ→304ページで組みが変わっているため、文字の読みやすさを求める場合は買い直す意味があります。 価格も44円下がっています。
「蜜柑」は入っていますか
入っています。 目次の2番目にあります。書名から外れただけです。
何編入っていますか
16編です。きりしとほろ上人伝/蜜柑/沼地/竜/疑惑/路上/じゅりあの・吉助/魔術/葱/鼠小僧次郎吉/舞踏会/尾生の信/入社の辞/東京小品/芸術その他/我鬼窟日録の16編で、版元ドットコムが目次を公開しています。
青空文庫で無料で読めますか
16編のうち15編は読めます。 読めないのは「我鬼窟日録」の1編です(2026年11月2日に当サイトで実測)。
「羅生門」や「鼻」は入っていますか
入っていません。 本作は大正8年前後の作品を集めた巻で、「羅生門」(1915年)や「鼻」(1916年)はもっと前の作品です。
電子書籍で読めますか
新版の電子版は2026年11月2日時点で未公表です。 ただし旧版『舞踏会・蜜柑』の電子版は2000年9月1日から配信されています。 内容は同じなので、電子で読みたい場合は旧版の電子版という選択肢があります。
いちばん長い作品はどれですか
「路上」で42,901字です(青空文庫本文の実測)。15編の合計127,142字の33.7%を占めます。「大阪毎日新聞」に1919年6月30日から8月8日まで連載された作品です。
まとめ|58年ぶりに組み直された、芥川中期の16編
- 『舞踏会』(角川文庫)は2026年12月25日・924円(税込)・文庫判304ページ・16編
- ★1968年11月1日の『舞踏会・蜜柑』の改題新版。書名から「蜜柑」が落ちたが収録には残っている
- ★ページは272→304(+32)、価格は968円→924円(−44円)。改版で安くなった
- ★紹介文は1968年版と一字一句同じ。「大正8年」の全角数字まで共通
- ★紹介文は「大正8年の作品計16編」だが、初出では大正9年が5編。表題作「舞踏会」も1920(大正9)年1月「新潮」初出
- ★16編のうち15編は青空文庫で読める。ないのは「我鬼窟日録」の1編だけ
- ★15編を実測すると「路上」が42,901字で全体の33.7%。表題作「舞踏会」は5,079字で4.0%
- 2026年11月2日時点で、KADOKAWA公式に新版のページはない
舞踏会・関連作品の読書ガイド
- 羅生門 芥川龍之介 レビュー|人間のエゴイズムを描く名短編 — 1915年の代表作
- 芥川賞 歴代受賞作と最新受賞作 — 芥川龍之介の名を冠した文学賞
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